いつまでも終わらない人生のような映画
自身が望んで映画を観に(行った)来たはずなのに、寧ろ見せられているという感覚に陥る。
前半 なんとも言えない奇妙な映画かと思えば、後半に進むにつれ 良質な哲学映画に感じられた。
ファンタジーチックな世界観は然る事乍ら、章ごとに分かれ場面が切り替わり移り変わったり、視点が異なったりと夢を見ているかのよう。
前半がモノクロで、斬新に感じたけれどかえって、散らかる色に気を取られず話に集中できた。
かと思えば、中盤からこれでもかという程のSFを浴びせてきて、逆にその鮮やかさに圧倒される。
モノクロの切り替わりが
視界や視野が広がっていく、色を認識する、自分の捉える世界が色づいていく、
と まさに成長過程を表しているよう。
脳を鋭く突くような張り詰めた空気を感じさせる緊張感ある音楽と、素っ頓狂で脱力感のある心地よい音楽の使い分けが気持ち良い。
あの音楽は、ぜひ映画館で体感するべき。
セットや小物などの作り、景色の色彩などは勿論、衣装がとにかく可愛い。
リアルクローズな昔の洋服を彷彿とさせるのにアバンギャルドなデザイン。
素晴らしく自然なマッチ。
そしてなんといっても、エマ・ストーンの演技がすごい。発音や表情、動作。前半は幼児そのものなのに後半はすっかり知的な女性の印象しかなくなる。同じ人が演じているのに。
見た目と中身の不一致による歪さ。
こうであるべき を教えずに育てるということ。
馬の頭だけの馬車とアヒル犬。