Yuichi

哀れなるものたちのYuichiのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

これまでの監督作品のほうが、圧倒的に好きだしいい映画だと思う。

何より、テーマが凡庸に感じた。

脳を入れ替えられて、乳幼児の知能しかない女性が少しづつ成長しながら、マッドサイエンティスト、父の手を離れ、旅立ち、世界を見て,学び、世の中を知っていく。

そして,最後には帰ってきて、自分の場所を見つける。

そんな話なんだなと理解していて、まあこんな感じで、監督もわかりやすくしたのかな、原作ものだしなと思っていた。

しかし、どうもタイトルがひっかかる。哀れなるものたち、poor thingsとは誰なのか。

そして、何度も使われる世界が歪んだようなワイドレンズ、覗き穴のようなカメラワークは、一体なんだったのか。

そんなことを考えていると、最初に主人公が外出した時にカエルを殺したところを思い出す。
そして、最後は将軍の命を救うことも。ただし、ヤギの脳みそと入れ替えるという悪事つきだが。

彼女はずっと、世界の常識に慣れずにいた。だから、興味の赴くままに小動物をころしたり、皿を割ったり、笑ったり、性の快楽を楽しんだりした。

そして、徐々に良識のある社会というものを学ぶにつれ、女性はそう言った衝動を抑えていく。

しかし、この良識ある社会に馴染んだ結末が、人間の頭をヤギの頭と入れ替えることだとしたら、つまり、父親の行為を模倣するだけの存在になるのだとしたら、なんと哀れなことだろうか。

私たちは、世界を学びながらいつしか最初に与えられた箱に収まり、そして、模倣してしまい、社会を良くすることも、破壊することも、飛び出すこともなくなり、ただ、庭で優雅にお酒を楽しむだけになってしまう。

そして,それを良識のある社会と呼んでしまう。

これこそが哀れなるものたちであり、つまり、現代社会に慣らされている私たちのことを監督はあわれであり、poorだと言っているのかもしれない。
Yuichi

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