エイデン

哀れなるものたちのエイデンのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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ロンドン
講義を受けていた医学生のマックスは、風変わりで周りに避けられている天才外科医ゴッドにアシスタントをしないかと誘われる
兼ねてよりゴッドの才能に憧れていたマックスはそれを承諾し、彼の住む屋敷へと向かう
そこでマックスが依頼されたのは、ゴッドの患者であるベラという女性を観察し、記録を取ること
ベラは以前 自殺を図って溺れたところをゴッドによって助けられたものの、後遺症で子どものような不安定な行動や、辿々しい言動を繰り返しており、屋敷から一歳出ずに暮らしていた
その素性すらわからないベラを不思議に思いながらも、マックスは彼女と時間を共にしていく
奔放にマックスを振り回していくベラだったが、急速に言葉を覚えると共に、外の世界へ興味を抱き始める
それを諌めていたゴッドもベラの訴えに根負けし、3人は森へピクニックへと出掛けることに
それをきっかけにベラはますます外の世界を見て回りたいと望み始めるが、ゴッドは彼女の安全のためとそれを許そうとはしなかった
ある日 ゴッドの頑なな態度に不信感を覚えたマックスは、過去の研究記録からベラに関するものを発見
その様子を見かけたゴッドは、ベラの真実をマックスに明かす
実はベラは、橋から身投げした妊婦の遺体に、彼女の胎児の脳を移植して蘇った存在だったのだ
ところが今となっては、ゴッドはベラを娘のように案じていると語るのだった
そしてマックスの思いを見抜いていたゴッドは、引き続き屋敷に住んで人目を忍ぶことを条件にベラと結婚するよう勧める
マックスはそれを快諾し、この頃には性に目覚めていたベラも結婚を了承するのだった
後日 2人の結婚に向け、ゴッドは書類上の手続きのため放蕩者の弁護士ダンカンを屋敷に呼び寄せる
姿も見せない新婦に興味を抱いたダンカンは、ゴッドの目を盗んでベラに接触
その美しさによこしまな感情を抱いたダンカンは、旅に出ないかとベラに駆け落ちを持ち掛ける
外の世界へ行く機会を得たベラは、ゴッドやマックスの制止も振り切り、壮大な旅へと出ることとなるが・・・



世界中で高い評価を得たSFロマンティックコメディ

すっかり賞レース常連となったヨルゴス・ランティモス監督特有の型破りな世界観を舞台に描かれる奇妙な女性の半生を描くドラマ

死んだ胎児の脳を母親の肉体に移植し誕生したという、衝撃的すぎる設定のベラ
身体は大人、頭脳は子どもの設定も決して出オチではなく、無垢な子どもの視点から好奇心で世界を渡り歩く物語へと、
更に世界の素晴らしさも、残酷さも全て受け入れ、彼女自身の世界を染め上げていく成長譚に繋がっていくのは見事

特にベラの成長譚としては捻りながらも良く完成されていて、賢い男達に囲まれ抑圧されている性差別的なモノクロの世界から、自由な世界へ羽ばたいていくに連れて豊かな色味を帯びていくのがよく表れている
その途中のパートがどハマりしたセックスを使った娼婦になるってのは毒気が強めだけど、そこでも偏見を突いた気づきなんかも与えてくれる
そんな新鮮すぎる視点だからこその、世界のダークな一面も成長の糧にしてしまうのが1番の特徴かな

好奇心や探究心を胸にした成長譚としても自由に羽ばたく女性を賛美したフェミニズム映画としても観られる作品
先の出自やら娼婦パートやら、かなり攻めた変化球すぎる内容には脳が打ちのめされたけど、評価の高いエマ・ストーンの演技力でしっかり締め、散りばめられたブラックな笑いが彩ってくれるので、難なく観られる
一見ゲテモノすぎると敬遠してしまいそうだけど、何よりしっかりとミットに収まるラストが良い読後感も出してくれるので、奇妙な大人向け寓話として観ましょう
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