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哀れなるものたちの景のネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ランティモスの主な作品は『女王陛下』だけ未視聴、という状況で鑑賞したら、思ったよりエンタメしてたし分かりやすくなっててびっくりした。コメディ映画として楽しませてもらったことが意外だったんだけど、特にベラとダンカンの旅が面白いんよね。身勝手なクソ男を生き生きと演じているマーク・ラファロがまた素晴らしい。キャラクターはみんないいけどダンカンが一番気に入りました。そしてキャラクターがいいから会話も面白くなる。ゴッドやマックス、マーサとハリーも良かった。

映像と美術と音楽にも大満足。冒頭の飛び降りとか、ベラのキャラクターを象徴するかのようなパフスリーブとか、冒頭のモノクロから急にカラーになる最初のセックスシーンとか、ベラとダンカンの奇妙で高揚感溢れるダンスとか。あとベラが娼館で働くようになるところからは話が少し停滞するんだけど、客との会話でベラが一瞬嬉しそうに笑うところも印象に残っています。

最後はマックスと結婚して終わるのかな〜とのんきに考えていたので、アルフィーの登場に驚いた(ヴィクトリアの件はサラッと触れて終わると思っていた)。ゴッドはベラの創造主だけど、アルフィーはベラの父なので彼こそが真の創造主ではあるんよね。だから「自分を創造した者を作り変えることで、自分もまた創造主になる」というエンディングからは、「ゴッドが父から受け継がされていたものを、ベラもまたゴッドから受け継いでいく」という皮肉を感じた。けど、その上で何故か爽快感もあり、そこはベラの貪欲なキャラクター故なのかなと思いました。

元々は劇場で見に行こうとしたものの体調不良と上映時間の長さに怖気付いて見送ったんだけど、無理をしてでも見に行けば良かったと後悔してます。長尺を感じさせないほどにベラの奇想天外な冒険は退屈しなかった。面白い映画でした。
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