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哀れなるものたちのtntnのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9
政治的な映画だと思った。政治的主張を含んだ映画という意味だけでなく、セクシュアリティの政治についての映画。
ベラが「学習」する性行為は、常にすでに外界との接触に晒されて「そんな言動を人前でするな」と周囲の人間が絶えずベラを「教育」する。こうしてポライト・ソサエティは、私的領域と公的領域の区別を掲げるわけだが、実際のところ公的領域の権力関係によって私的領域は構築されている。この構造に、セクシュアリティやセックスワークを社会の中に搾取できる対象として組み込む政治制度を感じた。(だからファンタジーという評価はあまりしっくりこない。めちゃくちゃ社会性、政治性を孕んだ寓話といった趣)「公的領域」と言いつつ、外の世界がキッチュで人工的にしか描かれないので、この見せかけの二項対立が抱えている箱庭性に気付かされる。その意味で、ベラが働き始める娼館も政治的な場所だと思ったし、最終的にベラは構造を逆手に取ってサバイブする術を見につける。(だから確かに「クィア」と呼べるかは微妙な気もする。)
ちなみに貞操観念神話と表裏一体の性的欲望を抑えきれない男性のドラマは、タイ・ウェストの『X』を連想。
ハナ・シグラの登場がとても嬉しかった!『マリア・ブラウンの結婚』にも通じる映画だと思う。
正直魚眼レンズ画面の効果はほとんど感じられず。。
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