メタ壱

哀れなるものたちのメタ壱のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9
一人の女が橋から河へ身を投げ死んだ。
科学者のゴドウィンは彼女の遺体を見つけ、彼女のお腹の中にいた胎児の脳を移植しベラと名付け育てる。
急速に成長していったベラは軟禁生活の中で外の世界への興味を膨らませ、ついには外の世界へと飛び出してしまうが…というお話し。

常識を知らなかった子供が大人になり常識を身につけると、人はそれを成長と呼びます。

だけれど、果たしてそれが本当の意味での成長と言えるのかと考えると、それは成長ではなくただの適応なんじゃないと思います。

僕たちの周りには社会的に形成された“常識”があるけれど、案外そこには根拠なんてない場合が多く、そもそも時代によって大きく変化するそれは絶対的な正しさや間違いなんてない脆弱なもの。

結局人々は、生まれた時からその時代と場所に存在する“常識”にいつのまにか自らを適応させ、他人にもそれを強要しているだけのように感じます。

だけれどベラは、自らの体験を通して正しく“成長”していました。

まずは目先の快楽や楽しみに溺れ、知識を得る中で外の世界に興味を持ち、自分の経験や世界との関わりの中から自分自身の価値観を見つけ出し自らの人生を決定してゆく姿はとてもかっこよかったです。

社会の常識の中で偶然手に入れた立場や、他人から与えられた価値観の中で生きる人たちが哀れに見えるほど、ベラは誰よりもちゃんと生きていました。
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