れおん

哀れなるものたちのれおんのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
わたしは、ベラ・バクスター。脳と身体はまだちゃんとつながっていないらしい。けど、わたしは急速に成長している。わたしは成長して大人になる。そして世界を知って、自由になるの...。この世界を見限り、一度は命を絶った女性が、ある天才科学者によって繋がれた新たな命から、再びこの世界を冒険する。

抑制・抑圧された世界からの解放によって見えてくる、人間の本能的な美しさと醜さ。ある女性の数奇な人生は、「現実」離れした世界なのか。胸糞悪さ・穢らわしさの先にある、人間という生き物を探求する哲学的・芸術的な表現に陶酔してしまう。

「わからない」からこそ「映画」として表現をしてみる。『女王陛下のお気に入り』のエマ・ストーン×ヨルゴス・ランティモス監督。製作陣の独りよがりな美的追求にとどまることなく、見事なまでの脚本・脚色によるストーリーテリングに、ベラの視点から世界を覗くような映像と音楽の彩り、そして、ベラを見事に演じ切ったエマ・ストーンによる世界観の創造。「映画」としての質に文句のつけどころがない。

We must work. We must make money. But more than that Bella, we must experience everything. Not just the good, but degradation, horror, sadness. This makes us whole Bella, makes us people of substance. Not flighty, untouched children. Then we can know the world. And when we know the world, the world is ours.

"良識のある社会"の形成は、人々に自由をもたらすのか。では、"自由意志"を貫徹した人間の集合体は、皆が幸福たる社会を形成できるのか。七つの罪源を背負う獣の生きる術は、それそれの個が自ら世界を知る旅に出て、その答えを他の獣と追い求めることにある。
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