しまうま

ボーン・スプレマシーのしまうまのレビュー・感想・評価

ボーン・スプレマシー(2004年製作の映画)
3.9
 マット・デイモン主演のボーン・シリーズ2作目。 
 一言で言うと、ゾクゾクした。シリアスなアクション・サスペンス映画という括りだけでは語りつくせないくらい、素晴らしい作品だと思う。個人的には前作よりも好きになったナンバリングとなった。


 マット・デイモンが素晴らしかったのは言うまでもないけど、周りのキャストもすごく良い味を出してくれたように思う。
 特にパメラ・ランディ役のジョーン・アレンのキレ者っぷり、そして前作にも登場したニッキー役のジュリア・スタイルズはもうほんと可愛くて、工作員のひとりではあるけど常識人でもあり、ボーンの人物像を殺し屋ではなく人として捉えようとする彼女の姿勢にはキュンキュンした。感情豊かなニッキーの表情は、今作のスパイスとして僕をなごませてくれたりもした。


 サスペンスならではの早い展開で次々と攻守交代したり、有利不利が変わって行く状況、息もつかせないとはこのことを言うんだなと実感する。アクションは無理のない現実的な要素を前提に、でもボーンが超人だとわからせてくれる。


 あと、単純に物語が良いね。
 原作の『殺戮のオデッセイ』を読んだことはないけど、たぶんそれの出来が良くて、さらに脚本陣の尽力もあってのことだと思うけど、ひととおり事が済んで、ボーンがある件を済ませるために、ある場所に出向いたり、その後のラストシーンでの演出など、クールでいて人間的な熱い気持ちも抱いているボーンのことを、心底応援したくなる。


▪️▪️あらすじ▪️▪️

 CIA内部調査局の捜査員パメラ・ランディは、CIAからロシアへの不正送金について調べていた。彼女の部下の諜報員が情報を買い取る手はずを整えようとしたが、キリルという暗殺者の手によって殺されてしまう。
 キリルはその後、依頼主に情報ファイルを渡すと、次の仕事として、二つの案件を任された。そのひとつは「ボーン殺害」だった。
 その後、デパートの爆破事件が発生したが、設置された爆弾の一発は不発弾であり、そこに残された指紋がボーンのものだということが判明した。そこで初めて、パメラはボーンの存在を知ることになる。

 一方、前作から2年もの間、追われる身を案じて世界各地を転々としていたボーンとマリーのもとには、キリルの魔の手が忍び寄っていた。


▪️▪️ネタバレありの感想▪️▪️

 
 まず、前回あれだけ奮闘して逃げきった恋人のマリーが、あっさりと序盤で殺された展開に驚かされた。顔もかわいくて、すごくチャーミングな女性だっただけに、悲しかった。自然とボーンに同情し、復讐を果たしてカタルシスを得られる展開を期待せずにはいられなかった。
 
 前述したけど、やっぱりパメラとニッキーの存在がほんとありがたい。孤独なボーンではあるけど、CIA側にも完全な味方とはいえないまでも、正義感と信念をもって仕事に当たってくれるのは、なんだか見てるこちらが「CIAも腐った人間ばかりじゃない」と救われる気持ちになる。

 アボットが自殺をしてキリルも死んだ後、ボーンがネスキー議員の娘のもとへ謝罪に行く場面はすごく好きだ。
 こういう映画の場合だと、本幹の事件が解決して「はい、終わり」みたいな終わり方が多いような印象だけど、今作はそうじゃなくて、ボーンそのものを追う映画となっている。あの場面があることで、「ただのアクション・サスペンス映画」ではなく、ちゃんと深いドラマ性を感じることができる。
 そうしてからのパメラへの電話、いいね。


 2時間、前作以上にスリリングな時間を過ごすことができました。
しまうま

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