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シチリア・サマーのtakaeのレビュー・感想・評価

シチリア・サマー(2022年製作の映画)
4.0
⁡1982年、イタリア・シチリア島で起きた⁡出来事を元に作られた、実話ベースの物語。

これが実話ということが本当に悲しい。
そして、1982年に起きた出来事ではあるけれど、きっと今のこの時代であっても十分起こり得ることだというのがもっと悲しい。

17歳のジャンニと16歳のニーノ。
バイク同士でぶつかったことがきっかけで出会い、共に時間を過ごす中で芽生えた友情が恋に変わっていきます。

人との出会いは偶然ではなく必然で、青臭いと笑われるかもしれないけどその出会いは運命だと私は思っています。

その家庭環境は全く違うように思えるけど、ジャンニもニーノも親を支えるために仕事をし、その年にしてはまるで大人のような役割を担っているところが共通していると感じました。
だから、そんな2人が出会い惹かれ合うのは必然だったのかな...とも。

恋とか愛とか友情とか関係なく、一緒にいると時間を忘れるほど楽しくて、不思議と心地良くて素の自分でいられたり。
この景色を相手に見せたいと思い、見せてもらった景色や教えてもらったことで自分の世界がぐんと広がって、まるでいつもの世界に色がついたように感じたり。

ただお互いのことが好きで一緒にいたいと思うこと。それのどこがいけないんだろう?

幸せは自分以外の誰かに決められるものではないし、その相手が同性であるというだけで誰かを好きという気持ちを制限されるなんて。
そんなのどうかしてると思うけど、でも本人を一番愛していると言える家族でさえまるで重罪を犯したかのように捉えて嫌悪し、なんて恥ずかしいことをしてくれたんだと追い詰める。

ニーノにあの言葉を言わせたシーンはあまりに辛く、悲しみと怒りで息が詰まる思いでした。

だけど、きっと2人を取り巻く人達はとんでもない悪者でもなく、ごく普通の人達なんだろう。
いわゆる“普通”の人達が思う“普通とは違うこと”を制限したり排除したりすることってよくあることだし、そういうところから偏見や差別が生まれるような気がします。

秘め事にすれば100年だって続けられる。

確かにそうかもしれない。
だけど、キラキラ輝く太陽の下で、夜空に鮮やかに咲く花火の下で、笑顔で堂々と一緒に過ごす24時間を私は選びたい。選べる世界であって欲しい。

そしていつかそれが100年だって続く世界になることを願って、願うだけではなくしっかりと考え、自分にできることをしていきたいと改めて思いました。

シチリアの美しい夏。キラキラと降り注ぐ太陽の光や木々の緑、真っ青な海。
夜空に咲く花火と火薬の匂い。その全てが美しく刹那的に思えた。だけど、どんな景色、どんな世界であっても相手を想うその気持ちは美しく尊い。

2時間14分と比較的長めではあるものの、全く長さを感じず2人の世界に引き込まれました。ジャンニとニーノを演じた2人も素晴らしかった。
観終わった後の余韻と胸の苦しさはまだしばらく続きそうです。

たくさんの人に観て欲しい。
ご興味ある方は是非劇場へ...!
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