06

ブルーを笑えるその日までの06のレビュー・感想・評価

ブルーを笑えるその日まで(2022年製作の映画)
3.7
「胸に穴が空いている気がするんだ、楽しくても、その穴が埋まらないの」
そうやって泣く女の子の姿をスクリーンに見て、忘れてしまった痛みを感じた。14歳の僕も、昔胸に穴が空いていると思っていた。

晴れたきれいな青空を「いやな天気」と評する感性。それは、あの年頃特有のものだろう。子供の頃は、感情と世界の見え方が直結していた。イジメを受けていた時は世界が暗く重たかったし、家族仲が悪かった時に、青空を見た記憶は一切ない。

それでも、大人になれば、そんな事を忘れてしまえる事がある。
だからこの映画は僕にとって「懐かしい」ものではあるが「今必要」なものではなかった。これは多分、凄くいいことだ。あの胸の穴が埋まり、鈍感に生きれているという事だから。だからこそ、今当事者として、この映画を必要としている子に、ぜひ観て欲しいと思った。

大人だからつい、思ってしまう。「実存しないものに救いを求める事に意味があるのか?」「協調性を養わないと、結局社会では辛いんじゃないか?」「そんなに繊細で、生きていけるのか?」
でも、そんなのどうでもいいのだ。その子が今苦しんでいて、そして救いと思えるものがある。そして生きていさえば、どうにでもなる。

「君と私」の為の物語。
主演の子の演技も素晴らしい、良い映画でした。




__よだん。
映画は、当事者性がない人間にも物語を通して、抱える苦しみや、辛さを伝えられるメディア。ブルーが監督の個人的な映画だったのならば、次回作はもっと他者の視点も取り入れて、更に多くの人に刺さる映画を作って欲しい。楽しみです。
06

06