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憧れを超えた侍たち 世界一への記録のzhiyangのレビュー・感想・評価

3.0
源田が思いがけず(?)メインキャラなので、源田ファンは見て損ない。あと牧は対してスポットライトが当たっていないくせにガヤ的に存在感を発揮していて、溢れ出る陽キャオーラがすげーなと思いました笑

全体としては、あのWBCは大谷翔平というフィクションじみた存在がヤバく、そして準決勝のメキシコ戦が異常にドラマチックであったのが良かったのだということを再確認できる。基本的にはテレビ番組の作りになっている(合間合間に入る説明的なナレーション、ほぼすべての言葉に入るテロップ、テレビ中継風のカウントやイニングの表示あたり)。なのでわざわざ金を払って映画館で見る必要は一切ない。「WBC振り返り番組」としては悪くないのかもしれないが。エンドロール後に優勝の歓喜の輪の中で大谷が「俺のグラブどこ?」って話す映像で終わるのはくすりとして良い(自分で投げたんだろ笑)

とはいえ、ドキュメンタリーとしても良し悪しは結構微妙ではと思う。というか、試合が始まってしまうと、基本的に試合展開のハイライトがメインを占めてしまっている。ベンチ裏の様子はちょいちょい抜かれるので、大谷と甲斐が「基本スプリットで、シンカーを見せ球として使えるかだね」なんて話をしている様子とかを見れるが、逆に言えばそれくらいかなあ。選手・スタッフへの密着映像しかないのも正直残念。「未来の子どもたちに云々」という栗山の言葉をちょいフューチャーしていたけれど、ちょいしかフューチャーしないあたりに素材的な限界を感じる。

しかしとにかくメキシコ戦の熱量がおかしい。東京ラウンドはまあ言ってしまえば長めのプロローグで、アメリカ戦も最後の大谷対トラウト含めてエピローグだなと。東京ラウンドは俺TUEEEEで終わっちゃったし、アメリカ戦ってロースコアで展開的には意外と地味だし。スリーランを打たれた佐々木朗希がグラブを叩きつけて涙するとか、アロザレーナのホームランキャッチを見て山本が「捕られました」と硬い表情で言うとか、試合後に村上が「また俺かと思った」と語ったり、この試合だけ圧倒的に緊張感が漂っている。
逆にこのなかで一人だけおかしいのが大谷で、再度勝ち越しを決められてベンチの空気の重くなるなかで「準備して! 準備して!」と笑いながら歩き回っている。浮いて見える。どうしても大谷だけは余裕が全然違って見えてしまう。

もう一つ、キャンプ以前のチームビルディングの段階を見られたのは良かった。コーチ陣と選手のコミュニケーションが結構上手くいっていたのかなと。清水がヌートバーとしっかり話をしていたのだなとか、宮城が妙にいじられているとか。栗山が「このチームが日本代表なのではなく、一人ひとりが日本代表。だからキャプテンはおかない」という謎理論をぶち上げた後に、裏でダルビッシュに「ごめんな」と声をかけていて、こういうところかー、とは思った。あと選考した選手に連絡をとる際に「球団を通じて「出ますか?」じゃ、感動がないじゃん」って言っていてめっちゃウケた。感動重視かよ笑 でもメジャー組の合流スケジュールについてメジャー側に細かに確認を求める指示をしていたので、やることやった後での「感動重視」なのかなとも思った。当たり前だが。そう思うと村上を四番から外しつつ「日本を背負え」って言い続けていたのも納得感が増す。

チームビルディングに関しては「誰を選ばなかったのか」に興味があったけれど、そこはヒントになりそうなところ全部カットorぼかしだった。個人的にはヌートバーとの接触や、クワンはどうだったのって凄く興味あったのだけれど……。

ワンカット、「山川穂高」と書かれたタオルを掲げる子どもがアップで抜かれてしんみりします笑
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