MasaichiYaguchi

うかうかと終焉のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

うかうかと終焉(2023年製作の映画)
3.6
第23回日本劇作家協会新人戯曲賞を受賞した大田雄史さんと出口明さんの戯曲を原作に、大田さんが自らメガホンをとった本作では、閉鎖間近の学生寮で住人たちが共に過ごす5日間が、恰も青春との決別を感じさせるような群像劇で描かれる。
街中を自転車で巡りながら空き地の写真を撮影している若いサラリーマン・西島伸太郎は、保存した写真を確認する中で1枚の写真に目を留める。
時は遡って5年前、取り壊しが5日後に迫った学生寮の1室で、美濃部軍平、児玉香奈枝、前野中吉、渡辺美月が麻雀に興じており、伸太郎は興味なさそうに本を読んでいた。
その日は美月の退寮記念の麻雀大会で、翌日は児玉が、その次の日は中吉が寮を出ることが決まっている。
5人はそれ後悔や悩みを抱えながら毎日送別イベントを行い、思いを込めた落書きを壁に残して1人ずつ寮を去っていくが、美濃部軍平だけでなく伸太郎も去り難い思いがあった。
監督・脚本・原作をつとめる大田雄史さんは、自身の青春時代を重ねた思い入れのある同名戯曲の映画化を企画し、映画化にあたって大田さんの母校、京都大学の吉田寮の廃寮問題をベースに脚本を作り直して製作している。
映画では、3月の終わり、閉鎖が決まった学生寮に最後まで居残ってしまった人たちが自分なりの区切りをつけ、夫々のやり方で寮を去っていくのを、時に切なく、時に希望を抱きながら旅立っていく姿を描いていく。