太田康裕

夢のまにまにの太田康裕のレビュー・感想・評価

夢のまにまに(2008年製作の映画)
3.5
僕は日活芸術学院の出身だ、ということを割り引いてこのレビューを読まれた方が良いと思います。

国立映画アーカイブ開館記念「生誕100年映画美術監督木村威夫」特集上映で。

映画としては少し分かりづらい構成だった。いくつかの時間軸が併走しつつもあまり説明はない。
軍人らしき謎の人物が誰だったのか分からなかったし、文士たちは果たして何者なのか?など決して大傑作!というモノではなかった。

が、たぶんこの映画はそうやって見るものではない。
映画人としてのキャリア後半、日活芸術学院やら大学で若手の育成に尽力した「木村先生」の授業であり宿題なのだと読み解くと途端に木村先生らしい良い映画だったなぁ…と思う。

熊井啓作品などのオーソドックスな、うっかりすると見落とすような美術から、鈴木清順作品のぶっ飛んだ、それだけで現代アート足り得る美術まで手掛けられる先生の夢と現実、過去と今がゆるゆると混じり合ったなんとも不思議で幻想的で、でも考えさせられる良い映画だった。

長門裕之は木村威夫先生に似すぎてるし、授業やパーティーシーンには日活芸術学院で教わった数多の講師陣出てくるし随分と感慨深かった