たくみ

春画先生のたくみのレビュー・感想・評価

春画先生(2023年製作の映画)
3.4
【私は世界で一番醜いブタ野郎です】

試写会にて鑑賞。
春画をテーマにしているという事で学びながら楽しめそうと思って楽しみにしていた作品です。

詳しくはこの後書きますが、先に言っておいた方が良さそうな点があります。
この作品かなり変です。
少なくともFilmarksのあらすじを見て興味持った方は肩透かしくらうと思います。
春画に魅せられた若い女性が春画先生や周りの人に振り回されながらも成長していく青春ドタバタコメディ、とかじゃないです。

鑑賞しながら「そっち系なの!?」と、慌ててチューニングし直しました。
てなわけでネタバレやだよって方は以下ネタバレ全開なのでご注意ください。
監督のトークショーもあったので、監督の発言で個人的に気になった点も最後に残しておこうと思います。




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まず初めに衝撃を受けたのが結構エロに振り切っている点でした。
春画とたしなむだけの映画だと思っていたのに登場人物たちの性描写も結構多めでした。
しかもかなり特殊な癖で、テレセク、NTR、SMプレイなどなど、、、
冒頭に書いたセリフを内野聖陽が連呼したりします。
なので、こういった性描写を期待していない、もしくは苦手だという人は全くハマらない作品だと思います。
(むしろフェミ過激派が見たら暴動が起きるレベルだと思います)

今作は、現代の多様化しつつある性愛を春画の歴史と重ねている作品です。
春画というものは江戸時代は多くの民衆に嗜まれていたにも関わらず、西洋文化が入ってきた明治時代に淘汰され、そして現代になって再度評価され直している。
日本人の愛情表現も江戸時代の時の様にもっとオープンであっていいし、マイノリティな性的嗜好(同性愛やSMがお好き、など)の持つ人たちも世の中にもっと受け入れられて良いのでは?という事を描いている作品なのかなと感じました。

春画に関わっているかなのかわかりませんが、この作品に出てくる人だいたい性にオープンな人たちばかりです。
この人たちが共依存しあっているからこそ、世界観がなんとか成り立っている感じでした。
ただ、その点がかなり異常で変な映画でした。
というか、その点があまり上手く描けていないので、ただのヤリチン、ヤリマン集団のように見えてしまうのが惜しいなと感じました。

春画に関わるポイントも前半のみで、後半はほぼ登場しません。
前半の春画の解説やどのように感じるべきなのかのポイント解説などはタメになりました。
白以外の部分を描く事で白を強調するというアンミカが好きそうな描画技法が一番関心しました。

その後はほぼポルノです。
弓子の喘ぎ声を先生にお届けするために、編集者がLINE電話繋いだスマホを頭に固定して正常位しているシーン見せられた時は流石にどう感じて良いのかわかりませんでした。久々に困惑しました。

女帝安達祐実の演技は素晴らしかったです。
妖艶すぎますね、金をくれって言われたら有り金全部渡しそうなくらい綺麗でした。
安達祐実さんも中々の演技だった気がします。
SMプレイの範疇超えた鞭打ちは迫真の演技でしたね。
ただこのキャラクター、ただのエロ要員じゃなくて結構大事な役割担ってました。
安達祐実演じる一葉は、昔愛した春画先生が愛した自分の妹を失った後、妹に憑りつかれてしまった春画先生がやっとこさ新たな愛する人を見つけたので、その人と幸せになれるように全力で春画先生が好きな事を教えてあげてます。
(まぁそれが端的に言えばSMプレイなんですけど)

一種の引継ぎが完了し、「私は世界で一番醜いブタ野郎です」と連呼する内野聖陽と、愛されている事を実感して絶頂する弓子を眺めながら一句。

~物おもへば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂かとぞみる~

ね?変な映画でしょ。もうここまでくると困惑ではなく絶句です。
チューニング間に合わずでした。もう好きにしてくれって感じでした。
なんかこのキャラクターだけやたら達観した人間なんですよね。
そのせいで作中で浮いてみえるんですよね。それもどこかモヤモヤした感じがありました。

春画を通して現代の性愛を描こうとした心意気はとても好きでした。
ただ、ここまで癖を振り切っちゃうと多くの人に届けるというのは難しいのかなと思います。
個人的にはこれくらい尖った邦画少ないので、どちらかと言うと好きな映画でした。

鑑賞検討されている方は慎重に。
安達祐実に鞭で引っ叩かれたいと思っている人は迷わずGOです。

【その他メモ・独り言】
・試写会後監督のトークショーあり。このトークショーで補完された事も多くあったので映画を理解出来た感じでした。
・ペリー来航後、日本に流れてきた外国産の塗料であるベロ藍により日本の画は青が鮮やかになり過ぎたとの事。
そのため昼と夜の書き分けが出来るようになり、それまで主流だった日本画の良さは死んだらしい。
それにより春画が生まれ、それが海外に流れジャポネスクになったとの事。つまり純日本のモノではないらしい。
・映倫とバチボコやりあった。元々R18指定想定で作品作ったのに、R15になったので予定狂ったらしい。
・女優の胸が映るタイミングについて。
→監督は事を致している時に裸が映るのではなく、その後に映る方が自然だと感じ、そのように撮影している。
 (作中SEXしている時は確かに映ってなくて、翌朝のシーンとかではだけていた)
 日常生活において裸で寝ていた人がひたすら胸を隠して見えないのが違和感に感じるらしい。
・春画先生の見た目は内野さんが提案して監督に寄せていった。
・ペリーは来航した時に春画もらってブチ切れ。(日本人的にはラッキーアイテム渡す感覚だった)
たくみ

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