ノラネコの呑んで観るシネマ

春画先生のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

春画先生(2023年製作の映画)
4.3
内野聖陽演じる春画研究者の先生に導かれ、奥深い春画の世界に魅了された北香那が、先生に恋をする。
出てくる人たち全員、かなりエキセントリックで可笑しな変人たちなのだが、これは映画全体で、江戸時代「笑い絵」と呼ばれた春画のテイストの再現を狙ったものだろう。
春画は単なるポルノではなく、明治時代に西洋の貞操観念が入ってくる以前、日本人が性に関してめっちゃフリーダムだった時代の粋なエンターテイメント。
当時の人たちが、芸術性と猥雑さが奇妙に同居した春画から様々な寓意を読み取って楽しんでいたのを、一本の映画に置き換える試みはとても面白い。
実際の画作りも、キャラクターの表情をあえて見せずに想像力を掻き立てたり、春画を意識した演出があちこちに見られる。
いい感じに狂った先生と北香那のカップルも愛らしいが、何気に一番美味しい思いをしてるのは、春画本編集者の柄本佑だろう。
あの無節操さこそ、一番春画っぽかった。
そう言えば最初に先生が北香那に渡したのは、以前永青文庫で開かれた「春画展」の図録だろうか?
質、量ともに素晴らしい展覧会で、ウチでも家宝にしているけど、また開催してくれないかしら。