デニロ

春画先生のデニロのレビュー・感想・評価

春画先生(2023年製作の映画)
4.0
あ〜んあんあん。

北香那の嬌声、更に形のいいおっぱいを剝き出しにしてのけ反る。え、どうしちゃったの?それまでのクールな雰囲気からの大転回。ここから物語は春画の世界を越えて、生身の男と女の押しつ押されつ、行きつ戻りつ、追いつ追われつの駆け引きが始まります。

春画の解読もさることながら日本画の魅力の解説もあり、ヒロイン北香那同様にわたしもまたその魅力に気付かされたのです。これからわたしの日本画の見方は変わるでしょう。そんなところが前半です。日本書紀の「国産み」のエピソードが可笑しい。イザナギとイザナミがセックスの仕方が分からなくて途方に暮れていると、そこにセキレイが飛んで来てふたりの前でその方法を身をもって示した、だから、日本のセックスの基本は後背位だとか。で、キリスト教文化の流入で正常位が入り込みとか。そのキリスト教では正常位のみが認められていて、その他の体位で致すと処罰される、とか、そんなの誰が確認して告発するんでしょうか。

北香那を虜にした春画の権威内野聖陽には出会いから何か思惑があったのだろうか。通い詰めた喫茶店。♬白いお皿にグッバイ…バイ…バイ/そしてカップにハローの文字が♬(詞:喜多條忠)、地震の揺れに行ったり来たり。おそらく彼は彼女の中に亡くなった妻安達祐実の香りを感じ取ったに相違ない。そしてその面影を完璧なものにするために調教していく。おお、ヒッチコックの『めまい』じゃありませんか。

それが徐々に変わっていくのが内野聖陽の弟子柄本佑と北香那のまぐわい。内野聖陽にとっては北香那はかけがえのないものになっているのだが、妻の死から7年不犯を貫徹している彼もまた男と女の深くて暗い陥穽に沈み込んでいるのです。そんな彼の切羽詰まった愛欲の形が。弟子とおもい人の情交の際の彼女の絶頂を聞き取ること。おお、覗き聞きではありませんか。それを観ている観客はその滑稽さに笑いを漏らしつつ、彼の哀しみに涙するのです。私、こんな女じゃないんです。女もまたしたくても出来ない男を思いながら咽び泣くのです。替わりと致しちゃうけど。

お互いを求めつつふたりのおもいはなかなか成就しません。ついには他者の介在による強制を招くことになります。魔性の女安達祐実。同情するなら金をくれ!とばかりにふたりを追い込みます。

セックスは秘め事。とはいっても大抵の人はおんなじことをしている。言わぬが花なのか。それとも、もはや性的嗜好の餌食となったしまう弱者救済のためにより強固な性教育が必要なのか。もう何十年も前から教員の生徒に対する性加害が言われているけれど、その時に逃げおおせた世代が遂に校長となりしたい放題しているという報道。校長同士のネットワークで閲覧しているんじゃないかとそんな風にも受け取られる。これは笑えない。
デニロ

デニロ