ぶみ

春画先生のぶみのレビュー・感想・評価

春画先生(2023年製作の映画)
3.0
この世界に、一目ぼれ。

塩田明彦監督、脚本、内野聖陽、北香那主演によるドラマ。
春画の研究者である主人公と、彼に師事し、春画の魅力に魅せられる女性の姿を中心に描く。
主人公となる「春画先生」こと芳賀一郎を内野、芳賀から春画鑑賞を学ぶ春野弓子を北、芳賀が執筆する「春画大全」を完成させようとする編集者を柄本祐が演じているほか、白川和子、安達祐実等が登場。
物語は、喫茶店で働く弓子が、偶然春画先生と出会ったことから、春画の魅力にハマっていく様が描かれるのだが、何より、本作品の特徴は、そのタイトルのとおり、なかなか日の目を見ることのない江戸文化の裏の華とされる春画をテーマとしていることで、ここまで大々的にスポットライトを当てて映像化し、全国のシネコンで上映されることは初めてではなかろうか。
その証拠に、公式サイトによれば、映倫審査で区分【R15+】を受け、商業映画として全国公開される作品では無修正での浮世絵春画描写は史上初ということであるため、ある意味、本作品を鑑賞することは、歴史の目撃者になるのかもしれないもの。
そして、春画を真面目に研究する芳賀を演じた内野、彼から春画を学ぶ弓子を演じた北と、どちらもハマり役であり、特に高畑充希や武井咲のような雰囲気を感じさせる北に至っては、徐々に心身ともに解放されていく姿を、まさに体を張った演技で熱演しているとともに、芳賀の話を聞いていると、知らず知らずのうちに、春画に対する基礎知識を学習することができるのも、特筆すべきところ。
反面、喫茶店で働く弓子が偶然出会った芳賀に対して、なぜ惹かれ、なぜ春画の魅力にハマっていったのかの描写が弱かったのは残念なところであり、そこがもう少ししっかり描かれると、ドラマ部分がより良くなったかなと感じた次第。
芳賀の住む自宅のロケーションが、よくこんな家を見つけてきたなと思わせるぐらい抜群であり、そこを軸に繰り広げられる春画の魅力と、春画を偏愛する人々に目が離せなくなるとともに、時折ある濃厚なシーンですら、ジメジメ感はなく、常に明るいラブコメディとして楽しめる一作。

無二より有を描く。
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