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名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のCANACOのレビュー・感想・評価

3.0
アガサ・クリスティ原作、ケネス・ブラナー監督・主演のエルキュール・ポアロ物第3弾。原作として選んだのは『ハロウィーン・パーティ』ですが、冒頭のハロウィン・パーティのシーンと、ミステリー作家のアリアドニ・オリヴァーが出てくること以外は完全な別物なので、予習・復習として読む必要は全くないです。

本作は、降霊会、密室、植物などアガサ・クリスティが好きな人ならわかるお馴染みの要素が沢山入っています。一方でホラー要素が入っていて、ジャンプスケアもちょっとあったり。これまでと同様、「新しいポアロ作品」に取り組んでいるのがうかがえ、それがアリかナシか好みが分かれそうです。

<あらすじ>
探偵を引退し、イタリア・ベネチアで隠遁生活を送るポアロの元に、旧友の女性ミステリー作家・オリヴァーが訪ねてくる。超常現象を一切信じないポアロに、子どもの亡霊が出るという屋敷で降霊会が行われるので、トリックを暴けるか参加してほしいという話だった。

霊能者に降霊会を依頼したのは、最愛の娘アリシアを亡くした元オペラ歌手のロウィーナ・ドレイク。冷め気味ながらも、オリヴァーに誘われるままポアロは屋敷の中へ。そこから奇妙な現象、奇妙な事件が次々と起こり出して……という物語。

本作はオリジナル脚本ですが、アガサ作品を読み尽くした人が練ったと思われるキャラクター設定と展開には好感もてます。聞き込みしながら各人のプライベートにずけずけ踏み込み、素性を暴いていくポアロ節も見られます。謎解きとしてはそこそこ。アガサファンなら先が読めるところを適度に裏切る感じがよかったです。※トリックについては言いたいことありますが触れません。

ポアロは一切感情に流されることなく、サイコパスに近い冷徹さをもって事件を解決する人物なので、(UFO研究家v.s.学者的な意味で)霊能者との相性は抜群。霊能者役は『エブエブ』にも出演したミシェル・ヨーで、この対決は見ものだな〜と思ったのに、早々に予想外の展開となったのが残念でした。

子供の頃から好きなアガサ・クリスティ原作ということで毎回すごく期待して、毎回何かしらの「コレジャナイ感」を抱えて終わるのがケネス・ブラナー版。ブラナー版はいつも原作にないポアロ像を入れてくるのですが、それがことごとく私にはハマらず、「違うんだよなあ……」と思ってしまいます。原作を知らない人なら気にならないので、よいかもしれません。
※「原作知ってるぞ」マウントではなく、映画/ドラマファンあるあるの「先に原作読んだがゆえの……」ってやつです。

オリジナルよりも人情味があるのはまだよしとできるのですが、ポアロは絶対に超常現象など信じないので、その徹底はしてほしかったです。
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