たくみ

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のたくみのレビュー・感想・評価

3.3
ケネス・ブラナー版ポアロ第3弾。
テイストをガラッと変えてホラーをメインにした本作。原作は未読です。
館ものホラーをポアロでやるという新鮮さはとても良かったと思います。
ミステリー×ホラーの緊迫感が相乗効果で終始ハラハラ出来ました。

カメラ割りも前2作とはかなり変わっている印象で俯瞰ショットや足元からのショットが多く、まるで幽霊がどこかから覗いているようでした。また、バストアップが多く、画面に圧迫感があるのも、館の窮屈感を醸し出していたように感じます。

今作基本的には楽しみだったのですが、ミステリー×ホラーということで鑑賞前に懸念していたポイントがありました。
それは「超常現象を超常現象で片付けないでほしい」という事でした。
ホラー映画とかなら超常現象が解決されずエンディングでも全然良いのですが(むしろそっちのが良い時の方が多い)、ミステリーでそれをやられるとなんでも有りになるような気がしていました。
その観点で見ると本作は不安が的中してしまった気がします。

ポアロが謎を解明し、いざラストスパートだと思った矢先、幽霊の手によって館の屋上から落ちてしまう犯人。これはいただけない。
殺人事件が絡んだ際は犯人が改心するまでがセットだと思っています。
それがなされないまま、やり直す可能性も奪って殺して終わりというのは事件解決になっていないと感じます。
しかも殺された娘が手を引いて犯人が死ぬのであれば、結局犯人とやっている事は変わらないのでは?と疑問に感じてしまいました。

答え合わせパートにおいても少し無理があるように感じました。
原作だとどこまで描写されているか不明ですが、はちみつに含まれている成分が有毒性であるというのが作中の情報だけだとわかりっこないように感じました。(元恋人が野花ではないと言っていたけど、それがなんなのかはわからない)

さらに毒による幻覚に関しても、どうとでも出来てしまうのであまり好きではありませんでした。
ポアロが見たものが本当にはちみつに含まれている毒によるものである証拠が無いと思います。
(もしかしたら毒盛られてなくても見てたかもしれない)

作中にバラまかれた伏線的なものもブラフが多すぎて冷めました。
落ちたシャンデリア、地下室の存在、何度か映されるオウム。半分だけ浮かしているティーカップ。
これらが何も事件と絡んでこないのが残念でした。
個人的には女性の声はオウムが出していた、とかを期待していたのですが、意味の無いものに成り下がっており、それなら出さなくて良かったなと感じました。

登場人物もモブが多すぎる。
こちらも原作見てないのでわからないですが、あれだけ人数いて個々に割り当てられている役目が少なすぎるような気がしました。
元恋人、助手姉弟、お手伝いさん的な人たちが映画的にほぼ必要のない人物になってしまっているので、もう少し活躍できなかったのかなと感じました。

医者の息子の演技は素晴らしかったです。
表情がコロコロ変わる演技の繊細さがとても好きでした。

割と賛の意見が多いみたいですが、個人的にはこのシリーズでぶっちぎりでつまらないと感じました。
映画との違いを確認するために原作読んでみたいと思います。


【その他メモ・独り言】
・幽霊に呼ばれるポアロ=引退して死んだも同然の日々を送っていたから?
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