ソラ

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のソラのレビュー・感想・評価

3.8
ケネス・ブラナーが、主演、監督のポアロシリーズ3作目。
ちなみに、エルキュール・ポアロの小説は全部で33作、本作は31番目なのでかなり往年

最初にお伝えしたいのは、かなりホラーテイストが強いこと。無意味なジャンプスケアが多く、ホラーが苦手な人にはあまりおすすめしない。『ホーンテッドマンション』より怖いリアルホーンテッドハウスでの物語。

既に騒がれている通り、原作である『ハロウィン・パーティ』とは登場人物の名前が同じであるにとどまり、舞台やストーリーが全く違う。アガサ・クリスティの超常現象とミステリーを掛け合わせた短編集『死の猟犬』に似通った部分はあるため完全にリスペクトを失ったわけでもなさそうなので、憤慨するクリスティファンには気を鎮めてほしい。

そもそもオリエント急行、ナイルに死すと興収が芳しくなく大きくテイストを変えざるを得なかったことには肩入れしたい。

舞台をイタリアに選んだことは成功!
ポアロの良さは、世界を旅することで自身も共に旅立っているように錯覚する。ベネチアの空撮は綺麗だった。また、ベネチアンマスクの不気味さが作品により不穏さをもたらす。

ミシェル・ヨーやリッカルド・スカマルチョに『ベルファスト』の親子等キャストは毎回豪華。ミシェル・ヨーの演技は凄いと同時に少し面白かった。

タイプライターの示す"M"のミスリードや所々に散りばめられるヒントは良かったが、解決の決め手となるものが観客のシンプルな推理では到達できない辺りがミステリーとしての完成度を下げている。それなら倒叙方式で作る方が良かったかも。

超常現象×ミステリーはポアロのような論理的な主人公との相性は良い。科学的あるいは人為的なものであることを証明することが明快だから。ただ、本作ではあまりその良さが出ていなかった。
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