keith中村

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のkeith中村のレビュー・感想・評価

5.0
 期せずして「ジュディ・ガーランド物件」だったので、そこだけ言及。
 一応、日本一のジュディ・ガーランド"市井"研究家を自称してますんでね。
 
 序盤でグレン・ミラーとかいろんな曲が流れる中に"Meet Me in St. Louis, Louis"もあって、なんでベニスが舞台なのにセントルイスなんだと思った。
 そしたら、中盤のポアロによる取り調べシーンでミシェル・ヨーの助手(「インシディアス」風に言うと、「サイキックのサイドキックス」)をやっていたドイツ人兄弟が「若草の頃」に言及するじゃありませんか。
 
 彼らはアメリカのミズーリ州に行くのが夢なんですね。
 ポアロが「なぜ?」と訊くと、「戦争に負けて森の中に隠れていたらアメリカ兵がやってきた。殺されるかと思ったけど、彼は難民キャンプへ連れて行ってくれた。そこには『若草の頃』の前半のフィルムだけがあって、それを何度も繰り返して観た。だから、作品の舞台となったミズーリ州セントルイスは素晴らしいところだと思い、どうしてもそこへ行きたいんだ」なんて言います。
 住むところも決めている、てなことも言ってました。
 「ケンジントン・アヴェニュー5135番地に住むんだ」
 
 ここで別の人物によって、「Clang, clang, clang went the trolley」と"Trolley Song"の歌い出しの歌詞も呟かれる。
 "Trolley Song"は名曲揃いの「若草の頃」の中でもとりわけの名ナンバー。おれ、数あるMGMミュージカルのうち、タップダンスをしないミュージカル・シーケンスとしていちばん好きなのはこのシーンだもんね!
 ただ、これは現代の日本の観客には絶対通じないから、字幕は全然違う訳になってましたけどね。
 
 いいですね~。テクニカラーの絢爛なアメリカ映画を観て、アメリカに憧れる。
 日本でも「風と共に去りぬ」を観て、「こんな映画を作る国と戦争して勝てるわけがないと思った」なんて話がありますが、それとも似てる。
 
 「若草の頃」は1944年のヴィンセント・ミネリ監督・ジュディ・ガーランド主演作品。この翌年ヴィンセイトとジュディは結婚し、さらにその次の年にライザ・ミネリを授かるわけです。
 舞台は作品が作られたちょうど40年前のセントルイス万博(正確には主人公のスミス一家が万博に行こうと思っている前年1903年がメイン)。
 戦時中の映画なので、日本ではもちろんリアルタイムには公開されず、1951年にようやく公開された。
 その2年前、こっちは日本でもリアルタイムに公開されたマーヴィン・ルロイ版の「若草物語」の大ヒットにあやかって、邦題は「若草の頃」となったが、原題は"Meet Me in St. Louis"です。
 そう。このタイトルは、本作序盤で流れる"Meet Me in St. Louis, Louis"から採られている。曲の題名から「ルイ」を一個省いてるんですね。
 これは万博テーマソングで、日本で言うならさしずめ(いさお)←(つまんねえダジャレを書くな!)三波春夫の「こんにちは~、こんにちは~」ですね。
 あ! 1904年が「セン、ルイー、ルイー♪」って繰り返してるから、70年千里万博も「こんにちは~」を繰り返してるのか?!(←絶対違う!)

 「っていうか、古いな俺! コブクロって書けよ!」
 「え~、だって、たった今調べるまで2025年万博のテーマソングがコブクロだって知らんかったんだもん! 盛り上がっとらんよなあ」
 
 おっと。乃木憂助みたいに多重人格同士で喋っちまった!(←旬の「VIVANT」ネタをぶっこんでみた!)
 ちなみに調べたばかりの知識を書くんだけど、コブクロの「この地球(ほし)の続きを」も、歌詞は「こんにちは~」を繰り返してるんですね。やっぱ1904年の「セン、ルイー、ルイー♪」オマージュか?!(←ぜってえ違うわ! そこは三波春夫だわ!)
 
 ともかく霊媒師の助手の二人は難民時代に「若草の頃」を観てアメリカに憧れた。
 彼らが住みたい住所の「ケンジントン・アヴェニュー5135番地」は、「若草の頃」でジュディが住んでる家の住所なんです。
 どんだけ「いい意味で」アメリカに憧れてるんだ。これは刺さった。ちょっと泣きそうになった。この文脈におけるアメリカ憧れはもちろん私の中にも濃厚に存在するもの。
 何歳になっても映画を観続ける原動力とか原点ってやっぱそこそこ「アメリカ憧れ」だもん。ほかの国の映画だって山ほど観てても。
 
 本作(って、今回「若草の頃」のことしか書いてないから「本作」ってどっちやねん! って自分でも思うけど、ポアロのほうね)の脚本はアメリカ人のマイケル・グリーンさんだけど、この「アメリカ憧れ」はアイルランド出身のケネス・ブラナーのアイデアが投影されてるんじゃないかと思う。
 だって、「ベルファスト」観た時も、めっちゃケネス・ブラナーに共感したもの。「ベルファスト」にぶっこまれてる要素、俺も全部好きだよってなったもの!(←詳しくは私の「ベルファスト」レビューをご覧ください)(←てか、自分で読み返したら「ベルファスト」評でも「若草の頃」に言及してた!俺、予言?! もしくはやっぱケネスと感性が一緒?! 何だか嬉しい😆)
 だから、本作(ポアロのほうね!)の「若草の頃」は絶対ケネス・ブラナーのアイデアなの!(←勝手な決めつけ)
 もう、そういうケネス、大好き。やっぱ飲み明かしたいわ! ヘップバーンさんじゃないけど、I could have drunk all night!(with you, Kenneth!)(←ケネスがNO!っていうだろけど)
 
 本作のホランド兄弟は、でも「若草の頃」の前半しか観てないんだよね。
(「前半」ってか、実際には「half」しか言ってなかったけど、エンディングを知らないと言ってたから間違いなく「前半」。ここはちょっと引っかかった。だって35ミリフィルムは一巻が10分から15分じゃん。てことは、113分ある「若草の頃」はだいたい10巻ものじゃん。だから、「前半」とかってないんだよね。なので、ここは自分で勝手に16ミリにブローダウンしたバージョンを観たんだと解釈しました。敗戦国であるドイツに「まあまあ最新である前年公開の『若草の頃』を米兵が持ち込むなら、16ミリ・ブローダウン・バージョンだろうな、と思うのです。16ミリなら前後編2巻に収まるだろうから)
 
 ここでまた「トロリーソング」の歌詞を呟いた登場人物が、「安心してください。ハッピーエンディングを迎えますから」って教えてあげてました。
 Don't worry, it's gonna be...(the happy ending!)
いや、そんな「とにかくさん」みたいな、「パーンツ!」みたいな言い方はしてなかったけどな…。
 
 いや~。本作ほど、こんな脇役に感情移入して映画を観たことはなかったかもな~、です。
 エンディングで彼らも「ひょんなことからゲットした大金」(のおすそ分け。あの子、「ベルファスト」の「環境に優しいから!」の子だよね?! ついでに言うとお父っあんも同じ役者さんだよね!)でミズーリに行けることになるし。
 あの兄弟にはアメリカで幸せになってほしいな。
 
 ちな、その姉(妹? "sister"だけじゃどっちかわからん)を演じたエマ・レアードさん、めっちゃ美しかったですね! これが長篇映画デビューなんだ。これからもスクリーンで何度も逢いたい!
 「眺めのいい部屋」のヘレナ・ボナム・カーターを16歳で観た「奥目美人」と同じ感覚に陥って今より40年くらい若返りました!

 やっぱ、焼酎喇叭呑みレビューはいけませんね。
 ほぼ「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」自体には言及しなかった割には満点を献上します!
 
 もう思ったことは全部書いたかな…。

 あ! そうだ!
 「ルイ、ルイ!」と言えば日本では太川陽…←マジ関係ねえからおしまいっ!

(全然本篇に言及してないのに満点献上ってどうなんでしょう、わたくし)

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Meet me in St. Louisの歌詞を勝手に訳します。

ねえ、ルイくん。セントルイスで逢ってよね。
万博で逢おうよね!
あそこほど明るい灯りがまばゆい場所はないでしょ?
万博で逢えたら「フーチクチ」を踊りましょう(本作的には難民キャンプでいろんな人種が踊っていたように)
 踊ってくれたら私はあなたの「tutti ウッティ(恋人)になるから
 だからセントルイスで逢ってよね
 万博で逢いましょうね
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「赤い闇」レビューに続いて勝手に翻訳しちゃったよ!JASRAC的に大丈夫?!