ぶみ

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のぶみのレビュー・感想・評価

4.0
この殺人事件の犯人は、人間か、亡霊か。

アガサ・クリスティが上梓した『Hallowe'en Party(ハロウィーン・パーティ)』を、ケネス・ブラナー監督、主演により映像化したミステリで、2017年公開『オリエント急行殺人事件』、2022年公開『ナイル殺人事件』に続くシリーズ第3弾。
名探偵エルキュール・ポアロが、霊媒師のトリックを見破るために参加した降霊会で殺人事件が発生、犯人を見つけ出す姿を描く。
原作は未読。
前2作に引き続き、主人公であるポアロを監督であるブラナーが演じているほか、ミシェル・ヨー、ティナ・フェイ、ケリー・ライリー、カミーユ・コッタン、ジェイミー・ドーナン、ジュード・ヒル、エマ・レアード、カイル・アレン、リッカルド・スカマルチョ等が登場。
物語は、一線から退き、ベネチアでボディガードを雇いながら隠遁生活を送るポアロが、旧友に頼まれたことから、ドレイク家のハロウィン・パーティと降霊会に参加するところからスタート。
『オリエント〜』では疾走する列車を、『ナイル〜』では優雅にクルージングする船上と、動きのある乗り物を舞台としていたのに対し、本作品は、基本屋敷内で展開していき、かつパーティの始まりから翌朝までの一夜が描かれるため、映像的に派手さはなく、終始暗めの映像が続くのと、『オリエント~』におけるペネロペ・クルスやジョニー・デップ、『ナイル~』におけるガル・ガドットといった、目玉となるような華やかなキャストを揃えているわけでもないので、前2作と比較すると、どうしても一見地味な印象は否めない。
ただ、前2作のような紀行文を読んでいるような雰囲気から一転、閉鎖された空間において、しっかりと地に足をつけた展開は、本格ミステリとして十分楽しめる仕上がりとなっており、前2作とは一線を画すもの。
予告編にもあるように、時折ホラー作品かのような展開を見せるのだが、これも今までには見られなかった演出であり、シリーズものとは言え、観る側を飽きさせないようにしたものと理解できるし、ポアロの新たな表情を見ることができるため、これはこれで悪くない。
また、監督作品である『ベルファスト』で主人公親子を演じたドーナンとヒルが、本作品でも同様に親子を演じているのも、監督ならではであるのに加え、エンドロールを眺めていたら、製作にリドリー・スコットが名を連ねていたのも見逃せないポイント。
映し出される光景は少ないものの、ひとたび建物から外に目を転じれば、運河が流れる水の都、ベネチアの美しい街並みが目の保養になるとともに、ポアロが巻き込まれるゴシックホラー調のミステリを堪能できる良作。

実に悲しい、真実は悲しい。
ぶみ

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