YAEPIN

普通の人びと:彼らを駆り立てる狂気のYAEPINのレビュー・感想・評価

4.5
ホロコーストで犠牲になった600万人のユダヤ人のうち、3分の1が銃殺で亡くなったこと、それを実行した部隊には一般人も含まれていたこと、さらに一般人には銃殺を実行せずとも身体的な罰は与えられなかったこと、その全てに衝撃を受けた。

それでも虐殺が行われてしまったのは、上官や仲間からの精神的な圧力が要因にあるだろうと、専門家たちは述べる。
当時、ドイツにとってユダヤ人は敵であり、対等に扱うべき人ではないという風潮が、何年も掛けて着実に一般社会に浸透していたことが分かる。

もともとユダヤ人は、キリスト教社会にとってよそ者であり、加えて金銭的に豊かな人が多かったことから、差別的な扱いを受けていた。
その末に世界恐慌が起こり、暴発した不満を「ぶつけていい相手」として社会の中で確立してしまった。
関東大震災で起こった朝鮮人虐殺と同じ構造を持つが、有事の際に自らの一線を守ることがどれだけ難しいことかを人類に突きつける悲劇である。

現在国際的に非難されている、イスラエルによるガザ地区への激しい攻撃は、ユダヤ人が2000年受け続けてきた悲劇からくる、切実なまでの恐怖心と防衛本能によるものだろう、というジャーナリストの解説を読んだ。
その歴史的な暴力の応酬を終結させるには、
もはや人道・非暴力・不殺生を訴えるしか術はないのかもしれないと思ってしまう。
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