ぶみ

BAD LANDS バッド・ランズのぶみのレビュー・感想・評価

BAD LANDS バッド・ランズ(2023年製作の映画)
2.5
全てに抗い、全てを掠め取れ。

黒川博行が上梓した『勁草』を、原田眞人監督、脚本、安藤サクラ主演により映像化した犯罪ドラマ。
特殊詐欺を行う姉弟が、巨額の金を手に入れたことから様々な陰謀に巻き込まれる姿を描く。
原作は未読。
主人公となる姉ネリを安藤、弟ジョーを山田涼介、ネリと旧知の仲である元ヤクザ・曼荼羅を宇崎竜童、特殊詐欺グループの名簿屋・高城を生瀬勝久、特殊詐欺を捜査する刑事を吉原光夫、江口のりこが演じているほか、大場泰正、淵上泰史、サリngROCK、天童よしみ等が登場。
物語は、オレオレ詐欺の受け子を手配する役割となる「三塁コーチ」を担うネリが実際に詐欺を働くシーンでスタートし、ここで、オレオレ詐欺の裏側を垣間見ることができ、なかなかスリリング。
ただ、クライムものとしての展開は、ここまでがピークで、以降、弟であるジョーが登場してからは、どちらかと言えば姉と弟の家族のドラマに舵を切っていくこととなるため、終始、ヒリヒリするようなクライム・サスペンスを想像していた私としては、少々拍子抜け。
しかし、カメオ出演者を始め、宇崎竜童に天童よしみと、大阪の西成らしい強烈なキャラクターとのやりとりは、台詞があまり聞き取れなくとも、何となく雰囲気でわかり、本作品の魅力の一つである反面、皆饒舌すぎて、全てを台詞で説明してしまうきらいがあったのは残念なところ。
また、終始、画面狭しと動き回るネリにつられてスピード感溢れる展開であり、前述のようにキャラクターも魅力的なのだが、ひとつひとつのエピソードが薄いのか、はたまた台詞だけに頼ってしまったせいか、全体的にはあまり抑揚がなく、尺の長さの割には盛り上がりに欠け、面白みが少なかったかなというのが正直な印象。
大阪のディープな部分を前面に押し出し、キャラクターも濃かったのに対し、物語の平坦さ、カタルシスの弱さとのアンバランス度合いが目についてしまい、クライム・サスペンスとしても、姉弟のドラマとしても、どっちつかずになってしまった一作。

Asshole、キュッとしめて。
ぶみ

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