ゑぎ

ヒトラーは死なないのゑぎのレビュー・感想・評価

ヒトラーは死なない(1945年製作の映画)
3.0
 1945年12月に公開された17分の短編映画。ヒトラーは死んだが、その思想は生き続けている、ということをクドクドと説く。冒頭の丘の急な斜面を行く馬車のロングショットは凄い構図。平和の到来を象徴している。続いて演説するヒトラーやゲッベルズ、あるいは街並みの中のハーケンクロイツの旗が画面から消える演出は、面白いことをやる、と思わせる。しかし、ドイツはビスマルクの時代から戦争に明け暮れている、束の間の平和を挟んでも、すぐに侵略戦争を再開する、という歴史を解説し、今度こそ、ナチスの残滓の復活を防がなくてはならないのだという論旨を展開する。全体、ほゞニュースリールや戦場の記録映像が使われて編集されているのだが、冒頭の丘のショットのようなイメージや、特に終盤になって連打される人々が怒りながら演説する仰角バストショットや喋る口元のアップショットなど、本作のために撮られたと思しき演出部分も散りばめられる。公園のジャングルジムや滑り台で遊ぶ沢山の幼児を流麗な横移動で撮ったショットなんかもある。しかし、戦場の死傷者や、強制収容所で殺害された死体が沢山映る部分が、公開当時はかなりショッキングだったのだろうと思わせられる。勿論、今見ても胸が痛む映像だ。とにかく膨大なフィルムのつぎはぎと、切れ目なく喋りまくるナレーションに圧倒される。何か同じようなことを何度も聞かされている気になるが、そこがプロパガンダ映画として周到なところだろう。本作は、米アカデミー賞でドキュメンタリー短編賞を受賞している。ちなみに、同年の短編(二巻)映画賞は『ベツレヘムの星/スター・イン・ザ・ナイト』で、こちらもドン・シーゲルの監督作品だ。
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