ウォーターライブラリー

大いなる勇者のウォーターライブラリーのレビュー・感想・評価

大いなる勇者(1972年製作の映画)
3.0
ロバート・レッドフォードが演じる戦争に嫌気が差し町を捨て山に籠もった人物が、山で暮らす世捨て人・開拓者・商人等と出会い、ネイティブ・アメリカンの民族と交易・敵対し、または結婚するというような物語。

作中の至る所で木や枝が登場する。自然と人間が対比する設定や自然内の撮影だから当然だろうが、これらの素材が活きてくる。例えばレッドフォードが殺された家族のもとヘ駆け寄るシークエンスでは、地面に散逸する丸太の荒れ具合がその不安を煽りたてる。その後、木で作った自身の家を燃やすショットは、復讐に転じるレッドフォードの文明的生活を捨てる決意表明ともなる(ちなみに、ジョン・フォード監督作品『リバティ・バランスを射った男』においても、ジョン・ウェインが想いを寄せた相手との新生活を夢みて、それが叶わぬことを思い知り、自らの家を燃やしたエピソードが類似例として思い起こされる)。

また、ネイティブ・アメリカンについて、それまでの西部劇的映画とは異なる描き方をしているのも印象的だ。交易・婚約・復讐の相手と、族ごと時系列ごとに異なる関係を構築する。復讐相手となる族の民と身振りで挨拶を交わし、それが切り返しショットで結ばれて終幕する。ジョン・フォード監督作品『駅馬車』が象徴するような、意思の見えにくい強襲者としてのネイティブ・アメリカンのイメージと比べれば、問題は大いに残るいう留保付きで、アメリカ映画の変遷を汲み取れるかもしれない。