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絞殺魔のあのネタバレレビュー・内容・結末

絞殺魔(1968年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

どちゃくそ面白い...。これは生きててよかったです。実在の事件を純粋になぞっていくとなると、かなりストーリーが単調になりがちだと思います。しかし本作は全くの例外と言えるでしょう。前半と後半でガラリと物語が変わる本作には、それぞれ爆発的な面白さがありました。
前半は、赤みを抑えた落ち着いた配色のボストンに、丁寧に人物を並べていき、それを広角で絞りを絞ったカメラでゆっくりと確実に撮ったエレガントな画面を突然バラバラに分解した時の、コトが始まる緊張感が本当に凄まじかったです。
後半は、何といっても犯人に丁寧に入り込んで行く心理描写が本当に素晴らしかったです。ここら辺にくると、どこか「Cure」のような世界観になってきましたが、被疑者の精神的な特性にしっかりとした軸があり、さらにそれに従って遠ざかってゆく世界の演出が、一筋縄にはいかない責任能力の問題について、観客を深く被疑者の目線に否応なく引きずり込んで行く感じがたまらなくよく、本作に圧倒的な軍配が上がると思います。また、後半ももれなく配色が素晴らしかったです。真っ白な取り調べ室に真っ白な服を着て沈む被疑者に、灰色のスーツで立ち向かう検事には、いわゆる「異常者」に向く偏見の数々が露見する前半に対して、対話という活路を見出しているようで、圧倒的な希望を感じさせました。
本作はまさに演出の大勝利映画というべきでしょう。大傑作です。
あ