じゅ

イビルアイのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

イビルアイ(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

姉妹の姉ナラと病気の妹ルナ、母のレベッカと父のギレルモ。ルナの療養のためにレベッカの母だというホセファの家へ赴く。電波は届かずプールは整備されていない。子供には閉塞的なそんな環境に、ナラはルナの子守のために残されることになる。数日の間ギレルモとどこかへ行くというレベッカは、ホセファと2人で意味深な会話をしており、何か裏がありそうだった。
その村には伝説があった。ある三子の姉妹の1人が魔女に目をつけられ、魔女は若さを取り戻すために毎晩少女の血を吸いに現れた。少女は病床に倒れ、みるみる弱っていった。姉妹の2人はカリブから来たという魔法使いに助けを求めると、魔法使いはバッカという魔物を生み出して持ってくるよう求めた。ダチョウの卵と子供と何やらの血を埋めて6日置くと生まれるそのバッカという魔物は、何かと引き換えに願いを叶えるという。少女の病気は少しずつ治っていった。姉妹の1人は魔法使いに弟子入りした。その後、偶然にもその魔法使いこそ妹を蝕んだ魔女の状態だったことを知る。姉妹の2人は再び手を組み、魔女を殺すことにした。魔女は夜、空を飛ぶために全身の皮を脱ぎ去るという。2人は大きなカボチャの中に仕舞われた魔女の皮膚を見つけた。魔女は塩に弱い。2人は皮膚の裏側に塩を塗り込み、魔女の帰りを待った。帰ってきた魔女がその皮を纏うと、たちまちその身が焼けて死んでいった。死の間際、魔女は様子を見ていた2人に呪詛を吐いた。2人が帰ると、母が死んでいた。バッカは彼女らの母親を奪ったのだった。姉妹の1人は自らの行いを正すべく、魔女が育てていたバッカを殺した。そのため妹の病は生涯治らないこととなる。2人の姉妹は、黒魔術を使わないと誓った者と、使うことにした者とで道を違えた。
その伝説を聞いた晩から、ナラはルナの血を吸う魔女の夢を見るようになった。いつしかナラはホセファが魔女であると思うようになる。ナラは妹を助けるためにルナを連れてホセファの家を飛び出したが、森を彷徨ううちにルナは発作を起こして息絶えた。その頃、レベッカはどこかの森の中で儀式を行なっていた。半分を地面に埋めた卵からバッカが生まれ出た。その瞬間、ルナは目を覚ました。安堵したナラだったが、行く宛のない逃亡の末、舗装された道路に出て暫く歩いたところで行き倒れてしまう。儀式を終えて帰ってきた両親に拾われ、ナラとルナはホセファの家へ帰された。この頃妙に顔の皺がなくなり姿勢が良くなっていたホセファは、包帯を顔に巻いてレベッカの前で腰が曲がったふりをしていた。ナラが屋根裏部屋で見つけていたスクラップブックを改めて見返すと、母レベッカと祖母ホセファ、そして曽祖母と思っていた3人は、それぞれ異なる速さで老いていった同年代の3人の女だった。その頃、帰宅すべくルナを車に乗せてナラを待っていたレベッカは、ルナの足に噛んだような痕を見つけた。もしやと思いホセファの部屋に戻ったレベッカは、ホセファに奇襲され卒倒する。ホセファはルナの血を飲んでレベッカと同じ見た目まで若返っていた。レベッカの代わりにホセファが車へ戻った。その後、ホセファが魔女であることを確信したナラもホセファの部屋へ向かった。その手には鋏と塩。そこにいるのがホセファと入れ替えられたレベッカとは知らず、ナラは彼女を滅多刺しにして塩をかけた。顔に包帯とサングラスをした女は焼けて消えていった。
ルナは快方したが、ナラは喋らなくなった。ある晩、ナラの生理が始まり、ナラは血の付いた寝間着を洗濯機に入れた。その時聞こえた赤子のような鳴き声は、鍵のかかった部屋の中から発せられていた。包丁で鍵を突破して入った部屋の中には、祭壇のようなものと木箱。木箱に入っていたのは見るも悍ましい魔物、バッカだった。思わず後退りした後ろには別の箱があり、倒した箱から人間の皮が出てきた。その時窓から入ってきたのは皮を脱いだ魔女。魔女に押さえ付けられ、あの家で老婆に言われていた「お嬢さん」という呼ばれ方をされて初めて、ナラはあの家で最後に母と老婆の間で起こったこと、そして自分がしたことの真相を知るのだった。


とりあえずまず言いたいことは、ポスタービジュアルがまじで類い稀なるカッコよさ誇ってる。こんなにクオリティ高いのそうそう見られるもんじゃないて。公開まで何週間か控えてる間家の机の上に置いて眺めてた。
まあ、本編観た第一印象としては、この爆イケポスターを見た時の気持ちがピークだったかなってかんじ。もしかしたら背景にめちゃめちゃ興味深い土着信仰の話とかあって、思ったより面白い話だったってこともあるかもしれないけど。


内容としては、ホセファの屋敷のお手伝いさんのアビゲイルが語った伝説上の三子の内の2人がどうやらこのホセファとレベッカだったらしいってなわけか。ナラから見て、曽祖母だと思っていた写真の人が魔女にやられて病に罹った少女で、祖母だと思っていたホセファが黒魔術との決別を誓った方の少女で、母のレベッカが黒魔術を続けた方の少女だったと。
ホセファは黒魔術を使わなかったから普通に人間として歳老いていったけど、レベッカは黒魔術で若さを保ち続けたから、結果として見た目的には母と子くらい違って見えるくらいになったわけか。で、「計画が変わることもある」とか言って今度は黒魔術反対派だったホセファがルナの血を吸って若返ることにしたと。ついでに言うと、レベッカのとこのアパートで子供ばっかり病気になるって言ってたのは、レベッカが血を吸いまくってたからなんだろうな。

そういう、なんか業と裏があるかんじの物語でもまあ決して悪かないというか、それなりに楽しいとは思うけど、『イビルアイ』って言われてあのポスタービジュアルでしかも蓋を開けたら伝説だ魔女だとか言われたならば、もう心が求めるものはゴリゴリのカルトなのよな。


カルトというか、村の物語ならその地の独特の土着信仰に基づいてたら興味深いなと思いながら観てた。魔女だの三姉妹だのカリブの魔法使いだの、実際に語り継がれてるものがあってそれが土台になってたらいいなと。
そういうわけで、解説目当てでパンフレット買ってみた。

アイザック・エスバンのインタビューが載ってたけど、土台にした土着信仰的なのついては思ったより具体的な話がなかったな。イビルアイ(邪視)の民間伝承がドミニカ共和国にあって魅了されたんだとか。加えて、ドミニカ共和国が舞台になる予定だったのをメキシコに変更して、メキシコとドミニカにあるアフロカリビアンの儀式やら伝統を取り入れたとか。ちなみに、アフロカリビアンはネグロイドのことっぽい?のかな?
アフロカリビアンの儀式というのは、例えばペドロのお葬式みたいな、アビゲイルが自分の首切ったあれのことだろうか。
あと、なんか最初の夜のみんなでの晩餐が妙にスクリーンいっぱいに顔を映すカットが多くて、その中でもホセファ(ババアモード)の目つきが嫌〜なかんじだったけど、あれも一つの「邪視」っぽい要素だったりしたんだろうか。

プロダクションノートの方に書かれてたことでは、エスバンは社会で起こるあらゆる出来事を物語を通して伝えてるんだとか。ともすれば本質は民間伝承がどうのこうのよりも現代の出来事の方なのかな。
といっても、どんな、っていうところは触れられてなかったが。まあそこは感じ取ってくださいってとこか。ただもう俺にはその気力がない。すまねえエスバンさん。
あとなんか、「女性同士の親密さが主な対立点となって」いるって書いてたな。翻訳が絶妙に難しかったのか知らんけど、ぶっちゃけ何言ってるかわからん。訳文として意味が通じそうなとこは、「母と娘、姉妹、祖母の間の複雑な関係が描き出されている」ってとこか。まあ祖母は祖母じゃなかったが...。それはまああんな得体の知れない祖母なら関係も複雑にならあな。エスバンが語るには祖父母というのは「その過去を知らない」「人生の反対側にいる」人か。そんな得体の知れなさを、邪視だの魔女だののテーマに乗っけて強調というか誇張というかやってみせたのが、このホセファだったのかな。


てか、夜に人間の皮を脱いだ魔女が途端に人間と違う挙動をとるの何でなんだろうな。四つん這いになったりとか。あれが本来の姿なんかな。
じゅ

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