ダイナ

クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男のダイナのレビュー・感想・評価

3.7
タランティーノ作品の出演者達が語る、監督の映画に対するスタイルや作品毎の裏エピソードをレザボアからヘイトフル・エイトまで順を追って掘っていく一作。ワンハリは少しだけ紹介されており本作にはブラピもディカプリオ(ジャンゴ出てるけど)も出ません。

ブラックエクスプロイテーションの精神性・復讐・仁義にこだわる作家性、作品間の共通項となるキャラから見えてくるユニバースの魅力、他作のニュアンス取入れ等その他諸々、既出の情報も多々あるものの、本作の大きい見所は俳優自身の「生の声」でした。主要人物を演じた俳優達がみんなニヤニヤしながら採用時や撮影の雰囲気、苦労話を語る姿はネット上や紙の活字の何十倍も魅力過多で頭に入ってきます。キルビル・デスプルーフで刻まれた「スタント」に対しての重要性はワンハリに継がれているのかなあとか。個人的にはマイケル・マドセンが凄い楽しそうでなりより。

そしてタランティーノの成功を語る上で避けることのできない「ワインスタイン」にちゃんと触れているのも驚きました。彼がセクハラクソ野郎というのは承知の上ではありますが、本作で彼の名前が出るたびに「ズゥーン…」とおどろおどろしいSEが鳴ってちょっと笑いそうになって申し訳ない。この騒動について、被害者の苦痛や重要性をタランティーノの作品映像を用いて紹介していたのは本作ならではの試みで見所の一つです。

この手の作品は、対象者が亡くなられた後に撮ってるような勝手な印象だったので、いやご存命なんだから監督自身の話も聞きたかったなあと思わなくもないです。最終作で忙しいのか、タランティーノに喋らせると撮れ高多すぎるのか。他者(俳優・映画人)視点からタランティーノってどんな奴なのよ、というのが本作で映されています。映画館のスクリーンで!という作品でもないですが、タランティーノ作品を複数観ている方なら損は無し、まだ観てない作品に興味が湧き、観たことある作品も見返したくさせてくれる一作。

追記、タランティーノが下積み時代金集めるためにテレビ番組でアホらしい踊りしてるのは眼福でした。
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