ハル

モダンかアナーキーのハルのレビュー・感想・評価

モダンかアナーキー(2023年製作の映画)
3.5
評価が難しいなこれは…
未完成かつ荒削り、自主制作感たっぷりの尖りきったインディーズ作品だった。
完成した商業映画として捉えると、色々成立していない雑さが見え隠れしちゃうので、この規模ならでは。
クリエイター達の熱量の高さ、燻った感情で作りきった“映画に対する想い”が迸っている。

制作は4年前、いまや新人賞を総ナメにして邦画界で名を馳せている河合優実がオーディションで選ばれていたり、村上虹郎、金子大地の輝きを見ても、演者陣の魂の削り合い、その迫力は半端じゃない。
急遽登壇した杉本監督からは「仲良しこよしではない、バチバチのやり合いだった」との言葉。
本当にその通り。
感情のぶつけ合いが刺々しく、言葉や所作の一つ一つが突き刺さるんだ。
居心地の悪さ、嫌な空気感がはっきりと伝わってくるし、まだ“何者でもない彼ら”の生の芝居が場を支配しているような感覚。
スクリーン内から放たれる強烈な圧。
「映画に出たい!もっとやりたい!!」そんなエネルギーが奔流していた。

10代のあの頃、荒れてるやつとか訳わからないやつが沢山いて、不思議とそういう悪ガキが格好良く見えてしまう時期。
劇中のアイテムとして警棒がでてくるけど、あれはマジで硬いし痛いんだよね。
ガラの悪いエリア出身だからメリケンサックや警棒など学校に転がっていて、色々触ってみたけど、一番ヤバイのが警棒。
子供でも簡単に大人の頭蓋骨かち割れるくらいの武器なので、あれが出てくるあたりに本作が醸し出す匂い、ダークな雰囲気を感じられる。

そして…幕の下ろし方も賛否両論を生むはず。
ただ、あそこでバッサリ終わらすのが本作の流儀なのかなと、妙に納得してしまう。
役者も監督も若く、まだまだ成長過程の存在。
彼らの今後を見続けることが、この洗練されていない等身大の作品に礎としての意味を持たせるのだろう。
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