おかちゃん

ニンフォマニアック Vol.1 ディレクターズカット完全版のおかちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

 皆さんのreviewを読んでいて「こりゃ、1度観ておくべき?」と思い脚を運んだ。
舞台はどの国…と探っているといきなりメタル音が響く。「久し振りにヘビメタ聞くな~。しかも欧州臭いの…」(後で聞いたがGerman Metal)しかも、かなりEdgeの効いたリフで今から始まる不穏さを演出する。そして「あれ、Patti-Smith!?」と勘違いしそうなズタボロのC,Gainsbourgだ。この窶れた女性と彼女を助けるインテリ初老とのdialogueで進む。

私が気になったのは…
・主人公Joeは、行為を道具と捉えている。日本映画では行為を男女が共有する幻想とか肉体の悦びと捉えるけど少し概念が違うな…と考えていると2つ浮かんで少し分かった気がした。1つはHardcore-pornoとSoft-pornoの位置づけ(映画である点では同じなのだが)。もう1つは、やはりキリスト教に影響される倫理・道徳観の違い(例えば姦淫に対する戒め)。しかし、物語りが進むと男女が共有する幻想≒Loveがテーマになってくる。
やや見方を変えれば、幼少~成長期の性への興味は国や人種や男女を問わず人間なら誰しも?であり、本作品で展開されるepisodeは少々猥雑だが、都会の雑踏で大人達を金儲けで翻弄するヤリ○○bitchと何が違うのだろうか!?)
また、普通なら成長と共に社会的立ち位置を感じとりSex➡️Love捉えなおしながらマトモな女性?に替わっていく(何が普通かは解らんという議論は別において…)。"友人B"はさっさっと去っていった。
つまりJoeは、行為を心の闇を埋めるための道具としか理解できないのだ。
・それは、Flyfishingの手段との対比にも表れる。
・しかし、Joeはその衝動と彼女の心の中にいつの間にか刷り込まれ揺れた倫理観&道徳心が激しく対立し、彼女の精神を苛むのだ。現代社会or道徳の水先案内人であるSerigmanに指摘されJoeは認めようとしないが、この倫理観&道徳心は彼女の心の中に潜み意識する。故に自らを病む。(➡️鬱病になる)
・ただ、彼女には偽善的愛(概ね倫理や道徳観は宗教的・社会的基盤を構成するための理屈に過ぎないことが多いので)は認めがたく、既成概念を人間の本音or本性の部分で激しく破壊していく。他人の家族を崩壊させる件もこの表れ(この場面のCamera-workとユマ・サーマンの演技はお見事)。
・Joeが他者への愛を認める事が出来ないのは、彼女のファム・ファタール的存在の父親が鍵なのだろう。

何れにせよ、本作で概念を激しく破壊していく様は、counter-cultureの急進的思想と同義を思わせ、ある種の小気味良さを感じた。そうR-Stonesが"Mother fucker"と叫びBeatlesが"Now we are more famous than Christ"と言ったように。そして、JoeはEndingで突如不感症になりVol,1で残された興味をVol,2へ繋ぐのである。