S3RI6

ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズのS3RI6のレビュー・感想・評価

2.2
原作ゲームガチファン向け映画

2014年に発売されたファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(以下、FNAF)は、革新的なインディホラーゲームだった。
設定は、夜間バイトの警備員として夜な夜な動き出すアニマトロニクスに殺されないように生き残るという内容。
「だるまさんが転んだ」のオニ側に限られた電力というリソース管理を加えたようなゲームだ。

プレイヤーは部屋から動けない。
扉を閉める、電気をつける、監視カメラを見る、といったアニマトロニクスに襲われることを防ぐ一連の行動ができるのだが、そのためには電力を消費しなければならない。電力が尽きてしまうとそれらの行動が何一つできなくなってしまうため、ほぼゲームオーバーとなる。

このホラーゲームが優れている点は、アニマトロニクスを防ぐ一連の行動自体が、ジャンプスケアによる怖さを最大限に発揮できるように作られていることだろう。

・アニマトロニクスを監視したいから監視カメラを見る→監視カメラを見終わったときにアニマトロニクスが画面いっぱいに襲い掛かってくる可能性がある
・電気をつける→恐ろしい顔をしたアニマトロニクスが見えてしまうかもしれない
・音を注意して聞かなければならない→ジャンプスケアのときにビックリしてしまうかもしれない

など。
別のゲームだが零zeroの早くクリアするためには「怨霊に自分から近づいてカメラで撮らなければならない」と同じだ。プレイヤーが怖いというパラメーターをゲーム外に持っているのは遊びとして強い。

ゲーム以外の面に向けるとさらに興味深い。
FNAFにはゲーム内に現れる情報やミニゲームに真相の断片が隠されており、沢山出ている小説からも考察することができる。これらの膨大な情報を整理して共有する考察勢のファンが世界中に沢山いるのだ。それもリリースされてこの10年もの間、供給側も作品を作り続けているためこの流れが途絶えていない。

前置きが長くなったが、FNAFの映画版はどうだったか。
ジャンプスケアを多様する安っぽい映画になると思いきや、ストーリー重視でシリアス、しかしあまり怖くないという独特な映画になっていた。

個人的な結論でいうと正直楽しめなかった。

ストーリーはシンプルなのだが、キャラクターの行動原理や補填する情報が足らず、それこそ熱烈なファンでもない限り意味不明なことが多い。そしてこの映画版はFNAFで最もキャッチーなところ、つまりゲームの遊びの部分を大分切り落としている。

序盤こそ丁寧でホラー映画的な流れがあるものの、なかなか襲って来ないアニマトロニクスや残虐すぎない殺人描写はヌルいと感じてしまうし、中盤以降はテンポが悪く話が少し停滞していたように思えた。
ジャンプスケアの演出もゲーム版のほうが100倍怖い。

本物にこだわったアニマトロニクス達はあまりに出来が良すぎて逆にCGに見えてしまう点も少し残念だった。

ただ、FNAF全体としてみると丁寧に作られた作品だと思う。
エンディングに使われている曲も、元はファンによる創作曲であり、これが公式テーマとして使われているところからも本作がゲームの宣伝ではなくファンに向いていることは明確である。
脚本に原作者、スコット・カーソンが関わっていることからも映画もFNAFワールドの拡張としての作品なのかもしれない。
満足度は低いがフレディ達は最高に可愛かった。
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