こつぶライダー

ザ・クリエイター/創造者のこつぶライダーのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.5
人間とAIが共存する未来のはずが…。

主役の目線でとことん味わえるSFアクション大作。
哲学×科学×倫理、その辺と映像や物語のバランスが整った平均値高めな内容でした。

ハンス・ジマーの音楽はハマるね〜
重厚感がある!
あとは選曲のセンス良かった!好きです!


SF大作って結構博打なんだよね。
当たればめちゃくそ面白いんだけど、ポイントがズレちゃうと悲惨な目に合う。

そういう意味で、わかりやすくてエンタメ性があり、かつ適度な考察の余地あるコア感もあり、満足度が高かった。


メカニズムとヒューマニズムの融合について、中身としても良かったし、ビジュアルとしても工夫がこなされていた。

AIの存在意義については、数多くの作品で触れられてきており、遡ればキューブリックの『2001年宇宙の旅』や、キャメロンの『ターミネーター』だったり、最近だと『M3GAN ミーガン』とか。

その都度、AIの恐怖が指摘されてきた中で、逆に「AIって本当に悪者なん?」ってのもあって、例えばクリス・コロンバスの『NDR114』や、スピルバーグの『A.I.』等。
どれもAI目線で人間を観た作品だった。

そんなカテゴライズで比較すると、人間とAIの双方とを織り交ぜたハイブリッド的な作品に仕上がっていた。


今作では、より人間の残忍さや愚かさが目立っていた。
アメリカが「AIが核落としてきて戦争ふっかけてきたんじゃ!我が正義の裁きを食らわす!」と言わんばかりに、手段を選ばずに駆逐していく様はドスが効いてましたなー。
(おや?現実とどこかリンクしそうな…)

AIは、自衛のために戦うって感じで描いており、特に中盤では人間と変わりない存在として扱われている社会がはっきりと映し出され、見ていて温かさも感じられた。


その辺り、終わってしまえば予定調和な内容でベタではあったんだろうけど、、、
先読みどうとか抜きにして、ジョシュア、マヤ、アルフィの3人の関係性から底知れぬ愛を感じて、とても感動したわ!

まあ、自分はあまり先が読めず展開にドギマギさせられました(笑)


それにしても渡辺謙の安定感よ。
もはや日本語より英語の方が聞き取りやすかったわ。

『TENET テネット』ぶりのジョン・デヴィッド・ワシントン、様になってたわ。
彼以外考えられないんじゃないか?って適役だった。

彼の中で人間とAIの区別がハッキリしていたのが、アルフィと接していくうちに次第に揺らいでいく様も丁寧だった。好印象。
今後も彼の活躍に注視していこう!


ちなみにネガティブな意見もあった。

尺としてまとめたあまりに、話のちぐはぐ感や、背景の説明が薄くなってしまっていた。

バランスが良いとは言ったものの、本当に過不足なかったかと聞かれると答えに迷うものがある。

30〜40年くらい先の未来とは言え、あの最初の映像からすると、私たちとは異なる時代の流れを進んでいたような気がする。

微妙な先進さ。
今の時代にAIが投入されたってだけで、ハイテクさはあまり感じられない社会。
もう少し管理とかしっかりできないのかよ!とツッコミたくなる。
警備に至っては、センサーとかないしさ、日本?あたりは監視カメラとか投入できないんか?

というあたり、もしかすると、対戦してるアメリカ筆頭とする西の国々の制裁で、資源確保できていないのだろうか。
ゆえにテクノロジーが行き届いていないと推測できる。

そう考えないと、アジア諸国の世界観は説明できないよな。

不可思議にもAIには資源全振りしてるんだが。まあ、家族と同等の扱いだもんね。



ただ、その辺は観客の想像とかによって解釈されるものとすれば、ある程度納得いく範疇だったので、個人的にはあまり気にはならなかった。


一番刺さったのはネパール?の宗教と科学の融合だった。
アルフィが「私は天国に行けない。人間じゃないから」とか、死亡の定義とか、死生観は序盤から度々出てきていて、それが終盤に畳み掛けるようにドバッと描かれたのが良かったなあ。

あの脳の情報抜き取ってAIに読み解かせるとか倫理観考えさせられた。


色々書いたけど、語り尽くせない程の考えが頭の中でぐるぐる巡っている。
多分、これからも振り返って考え込んじゃうんだろう。そのくらい自分にとって深い作品だった。

サブスクとかで出たら定期的に観直したくなっちゃうやつ。

最後に。
アルフィ役のマデリン・ユナ・ヴォイルズちゃん。最高だった。泣かされた!!!
これからも出てくるかな?
埋もれず、頑張ってもらいたい!
こつぶライダー

こつぶライダー