七沖

ザ・クリエイター/創造者の七沖のレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
3.9
〝守ると誓った。兵器と呼ばれた少女を。〟
シンプルだけれど、分かりやすくて力強いキャッチコピーだ。

完全オリジナルのSF映画を観るのはかなり久しぶりだ。原作があったり、すでに過去シリーズがある映画が多い中で、これは新鮮な体験だった。

いきなり『ターミネーター2』のように核攻撃が起こるが、本当にAIが人間に反乱を起こす日はくるのだろうか…。
西側の人間を冷酷に描き、AIと共存するニューアジア側を暖かく描いているのが、洋画ではなにげ新鮮。
AIの方が優しく思いやりのある描写が多く、人間らしさとは何かと考えさせられる。
AIがオフになった仲間を悼んだり、何かを信仰しているようなシーンがあるのも興味深い。
確かに人間と同じ性能の脳を持てば、人間と同じようになるのはある意味当たり前か。でもそれだと、AIと戦うということは、人間同士で戦っているのと同じなんじゃないか…とふと考えてしまった。

ニューアジアの人はAIと共存しているがゆえに、AIの秘密兵器を狙った西側世界の空爆を受ける。
そこに住んでいるだけで爆撃に巻き込まれてしまうのは、今ニュースで連日報じられているガザ地区の問題を思い起こしてしまう。
映画では人間とAIの対立となっているが、この対立構造は様々なものに置き換えられる奥深い問題だな…と感じた。

『ゴジラ』『ローグワン』の監督なだけあり、巨大なものが近づいてくるシーンの臨場感はさすが!
轟音と共に遠くの森の木々が揺れる様は、怪獣かAT-ATが登場しそうな雰囲気だ。
さらに、群衆が走って橋の上を逃げたり、鐘を鳴らして危機を知らせたり…日本特撮に影響を受けた監督ということもあって、観ていると不思議と昭和のゴジラ映画を観ているかのような錯覚を覚えてしまう。

監督の日本愛を感じる描写が多いのも魅力のひとつ。
指名手配の表記が「募集」なのは日本人としてちょっと気になるが(笑)、渡辺謙が思っていた以上に日本語を使ってくれて嬉しくなった。

あと、アルフィーを演じた子役の演技がうまい!終盤の方で「あんな眼差しもできるのか…!」と驚いた。マデリン・ユナ・ヴォイルズというらしい。今後の出演作も楽しみだ。

アルフィーが万能過ぎたり謙ロイドは本当はターミネーターなんじゃないかと思えたりして、ストーリーはちょっと雑な感じがした。ラストシーンもそこで終わりでいいのかという気持ちもある。一応キリがいいところで終わったとは思うのだが、もう少しこの世界のその先が観たかった気もするな…というところ。
子役の子も現実では成長していってしまうし、続編は難しいかな…。
とはいえ、オリジナルSF映画として間違いなく今観るべき内容だったと思う。応援し続けたいし、続編があるなら絶対観たい。
七沖

七沖