CheshireCatYK

ザ・クリエイター/創造者のCheshireCatYKのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
3.8
すっごくローグワンだったけど、すっごくローグワンで良かった🥺(同じ監督)

子役の子が素晴らしすぎて、クレジットの

"Introducing Madeleine Yuna Voyles"

(いきなり映画初主演とか初出演の俳優が大役の時に出るクレジット)の文字に、妙に感動した。

そしてジェマチェンが儚く、美しい。

この映画はJ-waveでいくつかの番組で紹介されてて観たくなったのですが、その中で、AIの研究?をしてる専門家が、この映画は「40年後の未来」というSFにしてはリアルな設定において、「本当に少し先にAIが発展した先の未来として専門家たちが予測している」AIの描き方をしていて、すごくリアルだった、みたいな話をしていたけど、全編通して本当に今の技術から想像つくものばかり出てきたから、本当にそうなんだろうなと思った。

割と序盤で、見た目ガチロボットのAIが、自分の子供を心配するかのような発言を繰り返しながら「オフ」にされるのを見て、人間がちょっと極端なレベルでヒステリックに恐れ慄く様子がとてもリアルで良かった。

AIやロボットが普通に人間のように生活するようになり、時に人間のような振る舞いまでするようになる世界線に生きるようになったら、きっと「人間らしさ」が強いAIというのは、「不気味の谷」を超えた存在というか、なんかきっととてつもなく恐ろしい存在に見えるに違いない。

まさにSFがリアルに感じられる時代になった恐ろしさが、ある。

とにかく最初得体の知れないAI(見た目はかわいい)くらいにしか見えないのに、映画が進むに連れ、どんどん人間らしくなり、見ている側にも同情愛情といった感情を持たせてくる少女の演技が素晴らしかった。

「AIが感情を持った場合どうなる?」という、多くのSFで描かれるテーマは、この映画では描かれない。あくまでもその「感情を持っている」と人間が思うさまは、「プログラムされた、創られた」ものであるという前提でちゃんと描かれているのが、この映画の良いところだった。

以下ネタバレ

ただ、「プログラムされた、創られた」ものに過ぎなかったとしても、

例えば人形作家が時間と丹精を込めて木を彫って人形を作った時、
誰かが誰かを大切に想ってぬいぐるみや洋服を作った時、
そして、研究者が多くの時間と、色んな想いを込めて、機械を創った時…。

きっとその「想い」は「物」にも宿っているというのは、私たちが一度は感じたことのあることなのではなかろうか。

そんなことを思い出したりして、アルフィーの存在には説得力があり、だから最後は(演技の素晴らしさはもちろん)泣いてしまった。

Ken Watanabe、大変いい役だった✨
そもそも戦争の引き金となったのは人間は「AIのせい」といっており、いわばそういう大義名分で戦争を始めたわけだけど、その「前提」が、もし間違っていたら…?という台詞。結局真相はわからないけど、この映画を観てる私たちにとっても「前提」だったはずの「AIのせいで始まった戦争」が、もし、そうじゃなかったら…?と、十分今でも起こり得る、というか人類の歴史を振り返っても、今でも、世界中で起き続けているであろう矛盾に、改めて唸らさせる。

そして、もしかしたらAI渡辺謙の言うことが本当かもしれない、と思った描写は、橋の上のシーン。同じ目的(「AIを殺す」)で動いているはずの2人の人間が目の前で殺し合うのを見て、みんなで驚くAIたち。きっと彼らには、「同じ命令・目的の元で動いているのになんで仲間同士で殺す=裏切るの???」となったんだと思う。これこそ、人間だからこそあり得る「一時の感情の高ぶりによる過ち」であり、「何かを守りたい」という感情に基づいて行動するから起きてしまう、すごく人間的な行動なのだと、見せつけられたシーンだった。

なんか設定が「ニューアジア」って言って、地理的にはネパール付近の設定なんだけど、タイカンボジア日本など混じってて、色んな国の言葉をお互いに話すのに理解し合ってる設定は面白くて良かったし、多少文化考証が微妙でも「日本設定ではないのだな?」っていう気になるので、ある意味良かった。

とはいえ、機械のディスプレイの表記はちょいちょい日本語だけど「そこにその単語使わないでしょ」が多いし、予告にも映ってるけど明らかに東京の渋谷らへんを描いているネオンで、「ハッピーボール」(まず名称がナゾだがそれは目をつぶろう)の「ー」が、縦の看板なのに横になってたりするのは、監修が入っていない最たる証拠なので大変ガッカリした。

最後かなり泣けるシーンの直後に、
デモを繰り広げる群衆が持つプラカードに、

「もういや遊牧民」

って書かれててめっちゃ笑えて興醒めしてしまったwwwww 超おもしろいけどwww 今じゃない感wwww
(たぶん、よくデモのプラカードにある"No More"を訳してしまったんだと思う…遊牧民ってのも、それをかかげてる人たちが遊牧民っぽいから謎だったし、とにかくあの1カットで雑念が入って来すぎたwwww頼むよ)

あと結局ちょっと敵味方の区別が終始難し過ぎてたぶんあんまり分かってないのですが(たぶん遊牧民?のデモもそれに関わってるのでよく分かってない)見終わってみると、そのあたりはまぁ、分かってなくてもいいような気がしています。笑

"Americans."の軽蔑した言い方が、ストレンジャーシングスのロシア人たちを思い出したwww