てっぺい

ザ・クリエイター/創造者のてっぺいのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.0
【AI映画】
親日家の監督による、日本アイやオマージュがふんだん。AIとの共存の是非を見る者にバンバン問いかけてくる骨太作品で、家族アイや人間アイも描く、人間の本質に迫る一本。

◆トリビア
〇アルフィー役を演じたマデリン・ユナ・ヴォイルズは、本作でスクリーンデビュー。監督は最初のオーディションで、その演技に泣きたくなったという。ドリュー役のスタージル・シンプソンも、うだるような暑さのバンコク郊外での撮影時も、彼女が息をのむほど素晴らしい演技を見せ、そこにいた全員が顔を見合わせたと語る。(https://moviewalker.jp/news/article/1160771/)
〇主演のジョン・デヴィッド・ワシントンは本作のテーマについて「同情心の大切さ」だと語る。(https://www.tvgroove.com/?p=124237)
ジョンの父は名優デンゼル・ワシントン。父が有名になったことで窮屈さを感じ、一度はアメフト選手としての道を選んだ経歴の持ち主。実は7歳の時に父が主役を務めた『マルコムX』ですでに俳優デビューしていた。(https://seikajitu.com/john-david-washington)
〇ギャレス監督がタッグを二度組んだ俳優は渡辺謙が初。「セリフが無くても目線だけで思考のプロセスを表現できるすばらしい方」と絶賛する。(https://screenonline.jp/_ct/17661918)
〇ギャレス監督は、本作の世界観について「『ブレードランナー』が舞台の黒澤映画のイメージ」と語っている。(https://www.20thcenturystudios.jp/movies/thecreator/news/20231006_01)
監督は『子連れ狼』からインスピレーションを受け、「年を重ねた侍と子どもの関係性が魅力的で、いつかSFを舞台にこの関係性を描きたいと思っており、それが結実したのがこの作品」と明かした。(https://eiga.com/news/20231017/21/)
監督は本作が『ブレードランナー』(82)や『AKIRA』(88)、『地獄の黙示録』(79)といった作品に影響を受けていると公言している。(https://moviewalker.jp/news/article/1162617/p2)
〇ギャレス監督は親日家。「僕は日本が大好きなんだ。スピリチュアルで、神話に彩られた古代の過去があり、とてもハイテクで、未来志向で、SFのような巨大都市がある。東京に行くたびに、大好きなSF映画の中に入り込んだような気分になる」と語る。(https://www.20thcenturystudios.jp/movies/thecreator/news/20230913_02)
〇本作の構想のキッカケは、広大な農地に監督が見た日本語看板の工場。SFオタク且つ大の親日家の監督が、その光景から1体のロボットを想像。工場内の事しか知らないロボットが広い農地や空や世界を見たら…とアイデアが膨らんでいったという。(https://m.crank-in.net/news/134622)
○「アバター」など数々のSF作品でも、ベトナム戦争を想定した地球上での作品がない事に監督が気づき、本作の製作に至った。(https://nordot.app/1087848281588482547)
〇本作で描かれる「ニューアジア」の盟主(のひとつ)は日本人。公用語(のひとつ)は日本語だという設定。(https://eiga.com/extra/komai_movie/60/)
〇本作の撮影手法は、通常の撮影後に自由にCGを足す“リバースエンジニアリング”というスタイル。通常はどこになにを合成するかを想定してマーカーを付けたりグリーンで覆うが、この手法はかなり斬新だという。(https://moviewalker.jp/news/article/1160305/)
○ 当初ベネディクト・ウォン(「ドクター・ストレンジ」シリーズ)が出演予定だったが、スケジュールの都合で降板。代わりに渡辺謙がキャストに加わった(渡辺はギャレス監督と『GODZILLA ゴジラ』('14)でタッグを組んでいる)。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ザ・クリエイター/創造者)
〇渡辺謙演じるハルンそっくりのビジュアルをした“謙ドロイド”が、東京新宿ほか全国各地で設置予定。(https://www.20thcenturystudios.jp/movies/thecreator/news/20231010_01)

◆概要
【原案・監督】
「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」ギャレス・エドワーズ
【脚本】
ギャレス・エドワーズ
「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」クリス・ワイツ
【出演】
「TENET テネット」ジョン・デビッド・ワシントン(デンゼル・ワシントンの息子)
「インセプション」渡辺謙
「エターナルズ」ジェンマ・チャン
「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」アリソン・ジャネイ
【撮影監督】
グレイグ・フレイザー(『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)でアカデミー賞撮影賞受賞)ほか
【公開】2023年10月20日
【上映時間】133分

◆ストーリー
2075年、人間を守るために開発されたはずのAIが、ロサンゼルスで核爆発を引き起こした。人類とAIの存亡をかけた戦争が激化する中、元特殊部隊のジョシュアは、人類を滅亡させる兵器を創り出した「クリエイター」の潜伏先を突き止め、暗殺に向かう。しかしそこにいたのは、超進化型AIの幼い少女アルフィーだった。ジョシュアはある理由から、暗殺対象であるはずのアルフィーを守り抜くことを決意するが……。


◆以下ネタバレ


◆日本
まず側面的な話から。監督が「子連れ狼」から着想を得てSFに落とし込んだという本作、なるほどジョシュアとアルフィーの関係性はまさに子連れ狼だったし、全体的に「ブレードランナー」('82)感もあれば、「ブレードランナー2049」('17)に描かれたネオ日本観もどこか共通。ジョシュアがアルフィーに出会った部屋の扉やウサギのぬいぐるみは、最近よくオマージュを目にする「AKIRA」('88)感も。ネオンや看板の日本語は日本人の我々にとってはややノイズ気味ではあるが笑、創造者、子、友、母の各章タイトル、エンドロールにまで日本語表記するあたり、監督の筋金入りの親日ぶりを感じつつ、やはり諸外国の日本に対する印象はどこかこんな異質感があるのだろうと改めて感じる。

◆AI
“ニルマータ”の用語解説から、ロスの爆発、アメリカとニューアジアとの戦争状態がHD画面サイズで設定される冒頭。本作がAI対人間、ニューアジアとアメリカの戦争を軸に展開される事がここに記される。そしてその後その対立構造が描かれながら、真に説かれていくのは“AIとの共存の是非”。アイス爆弾の犠牲になるAIに涙を落とすアメリカ兵もいれば、ドラム缶型の“カミカゼ特攻隊”AIが、その命を受けて覚悟を決める描写、“こいつらは人間じゃない、機械だ”のセリフ、そしてそもそも共存を求めるAIの姿に、善と悪、AIと人間の境界線がぼやけだす。同時にそれは、AIを自分とは違うもの、異質なものであるという先入観こそが、実世界で起こる衝突や戦争の根本であると訴えているよう。“ニルマータ”が授けたアルフィーの電力を操る能力が、人を攻撃するものではなく武器を停止させるものという表現こそが、本作が説く、そんな衝突や戦争への最大のメッセージ。ノマドを破壊し“ニルマータ”となったアルフィーは、敵のせん滅ではなくきっと“共存”を求めるはず。父母を失った涙から、彼女の表情に見えた満面の笑みは、その後のそんな平和を象徴したものにも思えた。

◆アイ
HDサイズからシネマスコープにサイズが変わる、ある意味本作の第二冒頭には、ベッドで戯れるジョシュアとマヤの姿。お腹の子の話をする2人に、本作のもう一つの軸が家族愛である事が記される。スパイでありながら、危険を顧みずマヤの姿を追うジョシュアは、終始到底スパイには見えず、それは真実の愛そのもの。ラストでたどり着いた2人のキスがなんとも力強くそして儚かった。懐いてくるアルフィーに少しづつ心を通わせるジョシュアが、“天国”や“オフ”の言葉で彼女を諭す姿はとても微笑ましい。実の子のDNAがアルフィーに搭載されていたと知る頃には、彼はもはや父親そのもの。本作はジョシュアの父親としての成長物語にもなっていた。マヤの呼吸装置を抜くジョシュアの涙と、天国への祈りを捧げるアルフィーの姿にはこちらも涙を誘われたし、揺るぎない家族愛の形がそこにあった。前項の通り、そのDNAを受け継いだアルフィーという“創造者”が、その先に切り拓いていく未来はきっと明るい。

◆関連作品
〇「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」('16)
ギャレス・エドワーズ監督作品。「スター・ウォーズ」の外伝的作品で、シリーズの2番目にあたる興収を記録したヒット作。ディズニープラス配信中。
〇「ブレードランナー2049」('17)
監督が本作を「『ブレードランナー』が舞台の黒澤映画のイメージだ」と語っている。この作品でも多数の日本要素が登場。プライムビデオ配信中。

◆評価(2023年10月20日現在)
Filmarks:★×3.9
Yahoo!検索:★×3.9
映画.com:★×3.0

引用元
https://eiga.com/movie/99650/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ザ・クリエイター/創造者
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