CHICORITA主任

ザ・クリエイター/創造者のCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.5
モンスターバース版『ゴジラ』やSWスピンオフ『ローグ・ワン』で知られる監督の新作。今回は長編デビュー作『モンスターズ』以来の完全オリジナル作品。ローグ・ワン』での監督交代劇もあり、しばらく名前を聞かなくなってしまっていましたが、本格SF大作でのカムバック。

大作といっても製作費は控えめの約8000万ドル。最近のマーベル映画が2.5〜3億ドルほどの製作費とのことなので、半分から1/3以下。ただ監督いわく本作は「低予算のブロックバスター映画ではなく、高額予算のインディペンデント映画」とのことで、それは制作手法に大きく表れています。

通常この手のSF映画では、予め世界観イメージやデザインを決定してからロケ地選びやセット組・撮影に進みますが、本作は先に東南アジアを中心としたロケ撮影と編集までを済ませ、後からCGによってSF的な画面構築を行うという、通常と逆のステップで作られています。
それは監督の長編デビュー作『モンスターズ』と同様の手法で、監督にとっては原点回帰といえるやり方。大作フランチャイズ映画を経て原点に戻った本作の絵作りからは、どこか工夫を楽しむような生き生きとした感じが伝わってきました。

アジア、特に日本文化へのリスペクトも随所で炸裂しており、漢字やカタカナのテロップには終始ニヤリとさせられました。
ストーリー的には先の撮影手法のせいもあるのでしょうがシンプルで、しかしエモーショナルで泣かせる内容。AI対人類というテーマですが個人的な印象としてはそうしたSF度はやや薄めで、AIに象徴される迫害される少数者・弱者を巡る現実の社会情勢を切り取ったような物語という感触でした。

監督の元来の素質が十二分に生かされた良作でした。ギャレス完全復活!次回の「超豪華インディペンデント映画」にも期待大です。
CHICORITA主任

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