Thorta

ザ・クリエイター/創造者のThortaのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.2
『GODZILLA』『ローグ・ワン』のギャレス・エドワース監督最新作。実質『ローグ・ワン』の焼き直し、超大作のしがらみを無くし自身の作家性を爆発させた人間vsAIの戦争を描く本格SF。

ここ数年で一番のSF映画だった。とにかく世界観とヴィジュアルが完成されている。人間側の西側諸国とAIと共存するニューアジアとの戦争で、舞台となるのはニューアジア。序盤ベトナムやタイの田舎道、棚田にAIロボットがいる世界観にワクワクさせられ、その奥に巨大な建物が聳え立つルックに惚れ惚れした。中学生の時初めて劇場で『スターウォーズ』を見た時の興奮がそのままスクリーンで蘇ったようで少しウルっときてしまいました。他にも、渋谷をトレースした未来都市やチベットの寺院にAIの僧侶がいる風景など、見るだけで観客の想像力を刺激する世界を堪能できたのはいつぶりだろうか。『スター・ウォーズ』や『ブレードランナー』、『アキラ』など他のSF映画との既視感はあるのに単なるオマージュの域に留まらず、その世界に独自の分子構造の空気が流れている。

しかし、この映画の内容は戦争映画であり、アクションも素晴らしい。ギャレス・エドワースはアクションの場面設定が恐ろしく上手い。中盤の戦闘シーン、『宇宙戦争』を思い出す緊張感の建て方からあいつが突っ込んでくるシーンは恐怖でしかなかった。他にも、多くの戦闘シーンがあるが8000万ドルという他の超大作の半分もない製作費なのにも関わらず全く安っぽくない。

演者と配役もぴったしで演技も抜群。映画を成立させるギリギリまでミニマムにしたドラマも個人的には良い方向に転がったと思う。昨今のフランチャイズ作品のような途中辞めにしてないし、多分何回か見るうちにキャラクターに感情が湧いていけば最後は泣く気がします。
また、ハンス・ジマーの音楽がここ最近で一番良かった。ふと本作を思い返すと自然と音楽まで蘇るパワーがありました。

正直SF大作らしいCG全開のラストと駆け足なドラマ展開は少し興をそがれてしまいますが、ギャレス・エドワースの「声なき弱者」を描く作家性によって気持ち良い着地になってます。AIをテーマにしているがシンギュラリティ批判でも、アメリカ的なヒロイズム信仰にもならない、今後のSF映画に一石を投じる作品。
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