『生命は、魂は、何に宿るのか?』
まずは何より、SFというジャンルでオリジナル脚本に挑戦した監督の心意気を讃えたい。数々の名作が並び立つこのジャンルにて、低予算(ハリウッドにしては、の注釈付きだが)で見事なルックを実現し一つの作品として公開にこぎつけたことが素晴らしい。
パンフレットでも語っていたが、AppleではなくSONYが覇権を獲っていたら…の世界観で描かれたメカニックデザインはそう言われるとSONYっぽい気がしてくるので不思議だ。日本人として悪い気はしない。
が、必要性はなく埋め込まれた日本語はちょっと露骨に日本を出しすぎたかなと感じたし、そういうデザイン面に力を注ぎすぎて肝心の脚本(とりわけ人物のバックボーンの描写不足)が疎かになってしまったように感じた。これではせっかくのオリジナル脚本を映像化する機会を得たのに勿体無い。
しかし、特に子役のマデリン・ユナ・ヴォイルズの情感豊かな巧みな演技は将来を期待するものであり、彼女のいかにも人間らしい演技が"感情を持ったAIは生命を得たのではないか"という考えを補強する根拠たりうる素晴らしい熱演で、勿体無い脚本といえどもSF好きは一見の価値はあるのでは感じた。
まあ総じて、コアなSFファンにとっては既視感がチラつきすぎてノイズになってしまう可能性のある要素が多いものの、原作ありきの作品やシリーズものが乱発されている今の映画界においての今作はダイヤの原石ともいうべき貴重な作品であると私は考えており、監督の今後の作品を注視していきたいと思う次第である。