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ザ・クリエイター/創造者のYAEPINのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
3.3
映像と音楽は間違いなく雄大で神秘的なのだが、扱うテーマがどう考えても『ブレードランナー』と変わりなく、既視感を覚えざるを得なかった。

そもそもAI暴走系のストーリーには没入できないことが多い。
『2001年宇宙の旅』や『エクス・マキナ』のように、特定の個体が進化して己の利のために行動を起こすところまではまだ理解できるのだが、自らの生を惜しんだり、宗教的行為に従事したりするのは明らかにやり過ぎである。
人が宗教を必要とする心理的なメカニズムを解析し、プログラムに落とし込めるのであれば、核爆弾よりもっと凶悪な方法で人類を殲滅できるだろう。

本作に出てくるAIのスペックは、少女アルフィーを除けば普通の人間とさして変わらなそうで、利点と言えば「代替可能」なことくらいである。
しかしそれすら躊躇われる(破壊が死と同一視される)のであれば、作中の人間たちはAIを生み出した目的を完全に見失っているとしか思えない。

この映画で何より感動したのはハンス・ジマーの音楽である。
荘厳な曲調の中にもどこか聞きなれないメカニックなフレーズが差し込まれ、それが作品に不可思議な魅力を与えている。

ビジュアルは、ベトナム戦争と日本語のネオン看板が並ぶ渋谷風の未来都市の掛け合わせで、ごった煮感が否めない。
とはいえ、広大な農園の上に降り注ぐ宇宙からのレーダーが、残酷さと神聖な美しさをどちらも持ち合わせていてうっとりしてしまった。
また、死者の脳をメモリにスキャンし、「シミュラント」に読み込ませて復元できるのは、画期的なアイテムだと思った。
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