Tom

ザ・クリエイター/創造者のTomのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

まず欠点から言っておく。この作品の方向性、テーマ性からしていわゆる「デススターを壊してやったぜ、万歳」で終わる結末はどう考えてもおかしい。これはAIと敵対する側の背景があまり書かれなかったこともあり、一方的な悪役としての役割しかないのが問題なのだろう。前半で示唆された敵側(前半では主人公が所属する組織側)
の事情をもっと厚く描けば良かったのだと思う(予算上その時間を割けない理由があったような感もあり)。他にも登場人物の行動における警戒感が薄いところなど、詰めの甘いところも結構ある。

とは言え、である。この映画は近年稀に見る傑作だと思う。
オープニングで主人公の背景を描写する手際もスタイリッシュだし、主人公の行動原理の背景もうまく説明しており、敵地侵入ミッションでのSF的なガジェットを伴ったアクションはメタルギアソリッドや小説の虐殺器官とも共通する高揚感を感じた。その後の逃走劇も世界設定、ガジェットを十分に活用した不快感を孕んだ作劇は素晴らしい。主人公の求める恋人の結末が生むその悲劇性からの、ラストのカタルシスは意外性こそないが非常に好ましく思える。
最初に言った通り最後の3分の1、デススター破壊編になってしまったことが本当に惜しい。
減点法だとせいぜい3.8から4点くらいなのだが、好みを考慮した加点法だとこの点数になってしまう。
もちろん好みに合わない人もいるのはわかるのだが、どちらにしろ一度は見た方が良い作品なのは確か。
自分としては他を圧倒して2023年のベスト1になる。
Tom

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