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ハーバーマン 誇り高き男のmhのネタバレレビュー・内容・結末

ハーバーマン 誇り高き男(2010年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

実在したドイツ系チェコ人一族の不沈を近景にして、スデーデン割譲から「チェコスロバキアからのドイツ人の追放」(Expulsion of Germans from Czechoslovakia)までを描いた歴史もの。
ユダヤ人を匿うのとか、森に姿を隠してのレジスタンス運動(主にコミュニストだった)とか、ドイツ兵がレジスタンスに殺されたら一人あたり十人処刑とかは、戦争映画では見慣れたプロット。この映画ではほかに、ドイツ軍に志願して加わるドイツ系チョコ人とか、脱走兵問題も扱っている。
だけどこの映画のメインはなんといっても、「チェコスロバキアからのドイツ人の追放」。これは、ユダヤ人に対してドイツがやったことを、チェコ人たちはドイツ人に対して行った(具体的には虐殺と強制収容と国外追放)というチェコの黒歴史。それをいちばん最初に描いた映画ということに大きな意義がある。
ざっくりコラボラシオン刈りが苛烈になったものという認識でいいみたいなんだけど、ドイツ人を強制収容した先があのテレージエンシュタットで、今度のそれには「麗しの」なんて枕詞がつかないただの飢餓地獄という状況。
ラストの展開は、「チェコスロバキアからのドイツ人の追放」が予めわかってないとついていけないようになってて、そんなワードを聞いたこともなかったわれわれ日本人は、ググって気がついて、ようやく歴史の闇に触れて震えるという流れ。
チェコでしょ「英国王給仕人に乾杯!」みたいに可愛いお話なんでしょと見はじめて、あれあれ「太陽の雫」のチェコ版みたいなものかと脳内で修正したら、最後はとんでもないところまでつれていかれた。
「英国王給仕人に乾杯!」は、所有を悪とする共産主義による決着だったけど、こっちはそれと見せかけて所有関係なしで、ドイツ系だから処刑というツイスト。
「N」の腕章をつけたドイツ系チョコ人たちが家畜用貨車に乗せられる。主人公の奥さんの胸には、ダビテの星も縫い付けられているというのをさらっとやるのが凄まじい。
あと副題は意味わかんない。そういう話じゃない。
いやーすごかった。
面白かった。
mh

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