らっとちゃん

猫と、とうさんのらっとちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

猫と、とうさん(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ささやかで、個人的で、当人たちさえも息苦しく感じている"男らしさ"からの解放を「猫を愛する男性」という小さな気づきからやさしく描いていて、素敵な作品。

人間の生活、その中での猫との関係にフォーカスが合ってるのも良い。実際猫飼っていて大好きで大切だけど、人間には人間の言葉しかわからないから、猫の気持ちを代弁するんじゃなく、それぞれの人が猫がいることでどう日々を暮らしているかという話なのが、猫ドキュメンタリー映画としてとても良い点。
人間側はSNSの人気者、パートナーを持って幸せに暮らす人、猫の為に活動する人、家も財産もない人とさまざまな人がいる。しかしその中でも猫との暮らしによって安らぎや幸福を得ているということが共通している。人間の温かい心を映したヒューマンドキュメンタリーとしても小さな規模で個人に寄り添っていて良い。

作り手がどういう人か透けて見えないのも、ドキュメンタリーとして素晴らしい。撮っている側の伝えたい言葉ではなく、撮られている側の発する言葉や考えがきちんとのっていると思えるのが良いよねやっぱり。

こうして見ると猫と飼い主が似ているのが面白い。目立ちたがり屋の人の元にはタレント力のある猫がいて、トレーニング好きの人の元には体の大きな猫、山登り好きの人には冒険心のある猫がいたりする。不思議だけど、縁ってやっぱりあるのかもしれない。
こういうの見ると、猫の世界でも人間世界の中にある以上社交的な方が恵まれるんだな、って複雑な気持ちになったけど、パンフレットの監督インタビューを読んで「慎重に社交的な猫を選んだ。警戒心の強い猫にストレスを与えたくない」と書いてあって、当たり前のことなのに自分が気づいてなくてびっくり!人好きのする動物にライトが当たる光景にも複雑な気持ちにならない観点を得た。

とってもやわらかくて小さく優しい、ジェンダーフリー映画でありヒューマンドキュメンタリーであり猫映画。素敵。