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Virupaksha(原題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

Virupaksha(原題)(2023年製作の映画)
3.5
「神域」の恣意的利用

山奥村で次々に起こる連続自殺事件の謎を追うインド産ミステリー+呪術ホラー。自ら巨大なハチの巣に顔を突っ込む、首を掻っ切る、頭に針をぶっ刺す等、平和だった村で突如異様な死が続発。その背後には、村の陰惨な過去が影を落としていた…的な田舎怖い系。

舞台は1991年。12年前に感染症で村の子どもたちが次々死亡→村でこっそり怪しげな黒魔術の儀式をしてた夫婦を村人たちが魔女裁判の如くに生きたまま火炙りで処刑。妻の方が「この村は墓場と化すだろう」と呪詛を吐き、12年後にその通り村が墓場になるって流れ。何となくコメディかと思っていたら、インド映画ならではな唐突でテキトーな恋愛要素(長い)とかミュージカルとかをぶっ込みつつも直球のミステリーホラーだった。

原題『Virupaksha』は全てを見通す者みたいな意味らしい。15年ぶりに里帰りした主人公が原題を実践するかのように素人探偵な感じで謎を追う。ただ村の信仰に基づく価値観がそれ阻む…という『ウィッカーマン』を(多少)思い起こす展開。そこに自己の人生についての疎外を足し算し、主要キャラの幾人かに担わせている。それがインド社会への言及なのかは知識がないからわからないけれど、少なくとも旧来的家制度的なものに対するジェンダー方面での意図はあるように感じた。

“死”がその目撃者(接触者)に伝播するあたり、村に入り込んできた“死”を感染症に見立てているのだろうし、その対策として住民の上位概念(上から降りてきたもの)である書物(作中では女神起因)というルールを絶対視し、それに従い盲目的に村をロックダウンするっていう完全にコロナ禍意識な展開。それにより混乱が齎され、集団ヒステリーとなり住民が暴徒化する。ここで得た知識を残し未来に伝える…といった帰結で原題の真意が明かされる。

お話的には既視のごった煮で目新しい要素はないものの、この手のオカルトミステリーで特殊効果を使ってしっかりと呪術シーンを盛り込むのは割と珍しいと思うし、スーパーパワー持ち?と錯覚するほどのアクションやゴシックホラー演出までごった煮がごった煮過ぎて最後まで楽しかったし、丁度中盤くらいにクライマックス感を出して休憩挟んでまた新展開が始まる…とか、こういうのも長尺気にしないインドホラーの強みな気がする。でも流石に長いよ!!
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