フラハティ

ミッドナイトムービーのフラハティのレビュー・感想・評価

ミッドナイトムービー(2005年製作の映画)
3.4
真夜中映画(ミッドナイトムービー)は、現在の映画界に多大な影響を与えた。


『エル・トポ』
『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』
『ピンク・フラミンゴ』
『ハーダー・ゼイ・カム』
『ロッキー・ホラー・ショー』
『イレイザー・ヘッド』
もうレジェンドばっかだね。

60年代後半から70年代のアメリカ。
この当時のアメリカは混沌としていた。
ケネディ大統領、キング牧師の暗殺。
ベトナム戦争の勃発。
南北戦争以来最悪の暴力的な混乱。
そんな中、真夜中上映は若者の心をつかみ社会の不安を代弁し、はみ出しものの居場所を作り出した。

ミッドナイトムービーは、流行れば10年はずっと上映が続く。
映画館の在り方が日本とは多少違うが、その年数を見ても驚くと思う。
高尚な映画や娯楽性の高い映画ももちろん素晴らしいが、本作で紹介されるような下劣で暴力的な映画もいつしか望まれて生まれ始めた。
その草分け的な存在の『エル・トポ』はほんと化け物。
ホドロフスキーは天才だよ、ほんと。
そして余計なことをしたジョンレノンね。

本作で紹介される映画たちは、この時代の深夜での上映だからこそ生まれた価値がある。
これらの作品が真っ昼間からやってるのはなんか違う。
その時代に合った作品やメッセージがあるわけなので、これらの作品もやはりあの時代に見事にはまったってこと。

SNSなどないあの時代。
若者が集まる場所は深夜の映画館で、学校や職場にいるよりも仲間が見つかる。
そして映画たちは、そんな彼らに説教することなどせず温かく受け止めてくれる。

本作で一番印象に残ったのは、『ピンク・フラミンゴ』の監督のジョンウォーターズのセリフ。
「僕は変わってないよ、ユーモアは同じだ。社会(アメリカ)が変わったんだ。」

カルト映画を作るのは観客。
映画は一人で観るのも楽しいけど、やっぱり誰かと観るのはもっと楽しい。
この当時の劇場には、ラリってる奴らばかりらしいので、楽しいの意味は多少違うんだろうけどね。笑

ミッドナイトムービーが衰退した一番の要因は、レンタルビデオの普及。
家でいつでも自由に観ることができるようになった。
でもやっぱり『ロッキー・ホラー・ショー』は一人で観ててもつまらない。
日本でも、劇場上映があるみたいなのでいつか行ってみたい。
今でこそ浸透した観客参加型の映画は、この当時でも存在していた。
ミッドナイトムービーは色んなものを生み出したんだろうな。


ドキュメンタリーとしても中々面白い。
この当時をもっともっと知りたくなるなあ!!
当時の時代背景とともに、監督たちが自らの作品やお仲間作品について語り尽くす。
自分たちが作りたい映画が作れた時代。
今観ればバカみたいなことかもしれないけど、映画と現実がクロスして何よりも輝いていたあの時代。
現実は暗がりだったが、映画が明るく照らしていた。

カルト映画と呼ばれ、とにかく常識破りの映画ばかりだが、この映画たちが映画の可能性を広げ新たな道を開いた。
傑作は夜、生まれる。
フラハティ

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