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天空のサマンのanemoneのレビュー・感想・評価

天空のサマン(2023年製作の映画)
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天と人と、神との交信
天よ、地よ、月よ、太陽よ
見ている間、ずっと鳥肌が止まらなかった

曽祖父さん、満州はどんな場所でしたか
美しい唄や祈りを聞きましたか

シャーマンの語源でもあるサマン(薩満)
人と精霊の使者
失われつつある満州文化の、その根源
サマン神歌の、神秘的かつ懐かしさのある響き。満州の人々の生の歌声
サマン太鼓の、土着的なリズムと、腰を揺らし奏でる鈴の音の煌めき
歌と太鼓のリズムが重なり合い、波のように旋律が浮き上がる。
モンゴルサマンの脱魂型の儀式は、映像としてとても刺激が強くて、サマンに限らず、宗教儀式におけるトランス状態の構造を、少し知ることができた。

途中でおばあさんが歌う子守唄は、すべての人類を包み込む地球の揺籠だと思う。
サマンは、すべての信仰の祖なのだから
この宇宙を、天空をも凌駕する大きな力

監督の金大偉さんが、愛新覚羅の血を引いており、その祖先の墓を訪れるシーンを見れた事も大きな収穫だった
(愛新(AIXIN)=金(ゴールド)という意味があるらしい)

もう、この地上にスタンダードな満州語は存在していない。
金監督が言うように、天空にも言語があり、伝承があるのだと思う。
それでも、歌は、言葉は、空気に溶けて、空に消えてしまう。私たちが、土の上で歌い、祈り、踊らなければいけない

満州から遠く離れたウイグル地区、シベ族の人々にも満州の言葉や歌、踊りが継承されていることに驚いた。
イスラム文化や北方の文化と共存し、複雑な土着の音楽を生み出してきた素晴らしい民族。
生のシバ語を聞くことができ、この映画は民俗学的にとても貴重な資料だと思う。

野祭で動植物を祀り、家祭で祖先を祭る。夜に灯を消し、暗闇の中で沸托女神を祀る背灯祭は特に神秘的
時代が変わり、淘汰されようとも、初代皇帝、ヌルハチへの哀郷は変わらない。

自ら羊の肉を削ぎ、豚の血を汲む
天に捧げ、いのちはまた循環する
だから私は今日も料理をする

天からの光が沸く、満州族の聖地、長白山と天池

天空の光がきらめく
その中に
天空に至る巨大な柱を見よう
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