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原子怪獣現わるのシネラーのレビュー・感想・評価

原子怪獣現わる(1953年製作の映画)
3.5
ストップモーションの巨匠
レイ・ハリーハウゼンが特撮場面を
初めて全面的に一任し、
『ゴジラ』(1954)にも影響を与えた
本作を初鑑賞。
怪獣映画の古典として素晴らしく、
アナログな特撮ながらも
ストップモーションによる特撮は
今でも魅力的に感じられた。

北極で行われた水爆実験によって
氷の中で眠っていた
原子怪獣リドサウルスが目覚め、
マンハッタンへと上陸する
リドサウルスと軍隊の攻防が描かれるが、
滑らかに動くストップモーションの
特撮は『キング・コング』(1933)から
更に進化していて良かった。
突如として市街地へと現れ、
大勢の人が逃げまとう中での破壊や
捕食描写は見応えあり、
クライマックスの炎上する
ジェットコースターでの
ストップモーションによる特撮も凄かった。
リドサウルスの設定も興味深く、
血液から未知の感染症が含まれている
のは怪獣映画として現実味あるところだった。
人間ドラマに関しても、
最初にリドサウルスを目撃して
周囲からは変人扱いを受ける主人公が、
次第に協力を得ていく展開が丁寧に
描かれている印象を受けた。

しかしながら、
リドサウルスの顛末からの
エンディングが唐突に感じられ、
そこは多少の余韻や人物達の語りが
欲しいと思うところだった。
そのリドサウルスを打ち倒す兵器も
唐突な発想な上に、
通常兵器との明確の違いも分かりづらかった。
そして、『ゴジラ』(1954)と比べると
そもそも恐竜を目覚めさした
水爆に対する人類の批判的な言及や
怪獣への哀れみといった描写は乏しく、
あくまでリドサウルスが街で暴れる
というモンスター・パニック映画の
側面が強いと感じられた。

色々と大味なところは否めないが、
怪獣映画の元祖として後の怪獣映画に
通じる古典らしさが感じられて良かった。
久々にエメリッヒ版
『GODZILLA』を鑑賞したくなった。
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