たんたんめん

くるりのえいがのたんたんめんのレビュー・感想・評価

くるりのえいが(2023年製作の映画)
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まず伊豆スタジオの建築としての魅力的すぎる面構えとロケーションがあまりに素晴らしく、「映画だ~」となった。
もっくんの参加ふくめて、カメラが入ることが前提の座組だったようなので、穿ってみれば伊豆スタジオでレコーディングしていること自体が演出のうちなのかもしれないが、なんにしても大正解なのは間違いない。

ライブシーンが中盤に挿入されていることを含め、基本的にはレコーディングの始まりから終わりまでを一切のナレーションを排し時系列順に並べているだけといえばだけで、特筆すべきようなドラマチックな展開や完成が危ぶまれるようなトラブルも存在しない。
フォーカスされているのは「くるりの音楽がどう生まれるのか」という一点のみで、これほど純粋な意味での「音楽ドキュメンタリー」もそんなにないかなと。「バンドってマジですごいな。魔法使いじゃん」という素朴な感想が一番しっくりくる。

ただ、ではくるりの音楽に興味がない観客にとっては何のフックもない作品なのかといえば、そうでもない。ある意味ではこの伊豆スタジオという場所自体のドキュメンタリーでもあり、そこに生まれた、一瞬ですぐ終わってしまうことが自明な、小さく親密なあるユートピアについての挿話でもあると感じたからだ。

まあ、バンドの20年来のファンとしては客観的視点で作品を評することはほぼ不可能であり、劇映画と同じ土俵で採点することもできないのでスコアもつけていないが、この瞬間をフィルムに残してくれたすべての関係者に敬意を表しつつ筆を置く。
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