たく

バジーノイズのたくのレビュー・感想・評価

バジーノイズ(2023年製作の映画)
3.7
孤独な楽曲制作に耽る音楽青年と、彼を表舞台に引っ張り出す女性が織りなす青春ストーリーで、全編に流れるDTMの音楽が心地良かった。序盤で清澄に強引に迫る潮の行動の荒唐無稽さに引いたけど、桜田ひよりの弾ける魅力に引っ張られて最後まで完走できた。本作はほとんど桜田ひよりのプロモーションビデオみたいな感じで、こんな魅力的な女性に至近距離で迫られても色恋沙汰が一切無いというのがお伽話みたいだったね。

人付き合いが極度に苦手な清澄は、若いのに珍しくマンション管理人をしてて、マンションの一室に住みつつ日々DTMによる楽曲制作に勤しんでる。彼の部屋の真上に住む潮が日々漏れ聞こえてくる清澄の曲のファンで、自身の失恋を癒す曲を流させるため深夜に彼の部屋に押しかけ、さらにベランダに降りてガラスをぶち割るというメンヘラ行動を取るのがホラー展開。彼女が騒音クレームでマンションを追い出された清澄を自分の部屋に住まわせる無防備さも非現実的で、これには「18歳のおとなたち」でナツミが見ず知らずの誠を自宅に招き入れ同居を勧めるのを思い出させ、最近の邦画の貞操観念はいったいどうなってるの?と戸惑う。

潮により強引に外の世界に引っ張り出された清澄の楽曲がSNSを通じてバズり出し、潮のつてで音楽制作会社に見出されてからトントン拍子に成功への道を進んでいくのが良くある展開。同社所属バンドのベーシストがヌルい現状に疑問を持ってたところに清澄と再会するのもご都合展開だけど、アーティストの旬を狙って使い倒そうとする商業主義と、自身の心の声に従う実存がせめぎ合う展開は手に汗握る。序盤で潮が清澄の部屋のガラスを割る異常行動が、終盤でちゃんと回収されるのが上手かった。

タイトルにあるバジー(buzzy)は、清澄が部屋を追い出される賑やか(buzzy)な騒音と、彼の楽曲がSNSでバズ(buzz)るというダブルミーニングになってた感じ。桜田ひよりの関西弁の心地良さが本作の魅力の一つだけど、千葉県出身とのことで驚く。彼女の演技には単なるアイドル的な魅力に収まらないしたたかさがあり、今後注目の役者さん。楽器演奏の吹き替え演技が上手かったのが印象的で、円井わんはいくつかのシーンで本当にドラムを叩いてるように感じた。駒井蓮が新人歌手役で登場したのはテンション上がったね。
たく

たく