マンションの管理人をしながら、その傍らで音楽制作をしている清澄。誰とも関わらず、ひとりで自分だけの音楽の世界に没頭していれば満足だった。そんな清澄の前に突然現れた潮。清澄と同じマンションに住み、ふと聞こえてきた清澄の音楽に魅了された潮は、清澄の世界に入り込み、彼の音楽をSNSで広めようとする。
監督は風間太樹。主演は川西拓実と桜田ひより。
1人でも音楽は奏でられる。
でも誰かと一緒に奏でて、共有することで得られる喜びがある。
清澄が海辺で、潮と一緒に音楽を奏でる場面で、清澄がそんな喜びを感じている様子が伝わってきた。人との付き合いも同じで、1人でいることが楽だけど、誰かと関わることで得られる喜びや幸せがある。自分1人の世界に引きこもっていた清澄が、潮との出会いをきっかけに、少しずつ変化していくその様を、川西拓実くんが見事に演じていた。たたずまい、雰囲気、音楽を奏でその世界に没頭しているその姿。全てが清澄そのものだった。そして桜田ひよりちゃんの確かな演技力と輝きが、作品の柱となり支え、魅力を増大させていたと思う。2人とも、セリフの行間にある心情を表現するのがすごくうまくて、リアリティがあった。他のキャストも皆好演。
音楽映画だけに、そこに流れている音楽が心地良くないと、映画の魅力は半減してしまうけど、サウンドトラックが本当に素晴らしく、作品の世界観にぴったりだった。ミュージックコンセプトデザインを手がけたのはYaffle。その美しい音楽にずっと身を委ねたくなる。
自分の殻に閉じこもっていた清澄と、やりたいことが見つからない潮の成長物語でもあるこの作品。バンドを組んだり、音楽業界に少しでも身をおいた人ならわかるようなほろ苦さを伝えつつも、澄んだ空気のような世界観と雰囲気に満ちていて、まさに琴線に触れる瑞々しい作品。清澄と陸のセッション、清澄と潮のセッション、潮が初めて清澄の歌声を聞いた時など、見ていて何度も涙が流れてきた。優しく、美しい映画。
たくさんの人に見て欲しい作品。素敵な作品に出会わせてくれた拓実くん、ありがとう。
